著者
荒井 優実
出版者
Japanese Society of Water Treatment Biology
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.9-14, 1976-10-15 (Released:2010-02-26)
参考文献数
11

富山新港貯木場における環境悪化を未然に防止するため, 胎生メダカ類利用の可能性を検討する目的でグッピーの鹹水に対する適応性について観察を行なった。(1) グッピーを種々な濃度の鹹水に移入した時の抵抗限界濃度は, 成魚がS19‰前後, 稚魚がS7‰前後であった。また, 鹹水に対する抵抗力は, 魚体が大型である程強いことが成魚で認められた。(2) 成魚を種々の希釈海水で順化した場合, 純海水移入後の生残率は, 順化に用いる希釈海水の塩分濃度が高い程, また順化時間が長い程高いという結果を示した。稚魚の1/5海水と3/5海水での2段階順化では, 第2段階の順化時間が第1段階の順化時間に対して, 同等か又はより長い場合に良好な生残率が得られた。(3) 稚魚を須化後3ヵ月間鹹水飼育した時の成長は淡水飼育と大差なく, 生残率では淡水飼育よりも良い結果が得られた。しかしながら, 鹹水飼育においては尾柄屈曲個体が半数以上も観察された。(4) 鹹水飼育或は淡水飼育された雌親魚の鹹水中における産仔状態は, 産仔数, 仔魚死亡率, 奇形仔魚発生率, 仔魚の体位ともに, 淡水中の場合と比較して全く遜色がなかった。以上の結果から, 鹹水に対するグッピーの適応性はかなり大きく, 適当な順化を行うことにより, 鹹水中での飼育・繁殖ならびに富山新港貯木場への放流は, 十分可能であると考えられる。本研究について種々と御教示をいただいた国立公害研究所慣用生理部長( 前富山県衛生研究所長) 久保田憲太郎博士, 当研究所細菌部長児玉博英博士, 研究員井山洋子博士, 海水採取等ご援助下さった富山県水産試験場の方々に厚く御礼申し上げる。なお, 本論文の要旨は, 第10回および第11回日本水処理生物学会( 於昭和48年10月奈良, 昭和49年9月東京) において発表した。