著者
内田 史武 黨 和夫 荒井 淳一 高木 克典 國崎 真己 阿保 貴章 日高 重和 七島 篤志 澤井 照光 永安 武
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.809-812, 2017-07-31 (Released:2017-12-05)
参考文献数
9

症例1は65歳の男性,統合失調症のため外来通院中であった。自ら左腹部を包丁で刺し,約1日経過した後救急搬送された。来院時刺創部から大量の腸管の脱出を認めた。バイタルサインは安定しており,腹部造影CTで腹腔内臓器損傷の所見は明らかでなかったが,緊急開腹手術を行った。腹腔内臓器の損傷はなく,脱出腸管はisolation bagに収納して腹腔内へ還納した。症例2は43歳の男性,仲間と口論になり左上腹部を包丁で刺され,救急搬送された。来院時左上腹部には包丁が刺入していたが外出血はなく,バイタルは安定していた。腹部造影CTで包丁は膵実質,横行結腸に近接しており緊急開腹手術を行った。包丁は網囊に刺入していたが胃,横行結腸,膵の間に位置しており臓器損傷はなかった。腹部刺傷は頻度が低いが迅速な判断を求められるため,外科医は手術の適応を含め,その一般的対応を熟知しておかなければならない。
著者
荒井 淳一 黨 和夫 生田 安司 内藤 愼二 岡 忠之
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.234-238, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
15

症例は68歳,女性.腹部腫瘤を主訴に受診した.腹部左側に弾性硬,辺縁整,可動性不良の巨大な腫瘤を触知した.CT,MRI,腹部エコー検査にて後腹膜に左腎下極に接する8×6cmの分葉状の腫瘤を認め,左腎は水腎症を呈していた.後腹膜に発生した脂肪肉腫の診断で腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は黄白色調・弾性硬であった.腫瘍組織は,lipoblastを有しlipoma様パターンを呈する分化型脂肪肉腫の組織とlipogenesisを失った紡錘形異型細胞の錯綜増生から成る悪性線維性組織球腫様の組織が共存しており,病理組織学的に脱分化型脂肪肉腫と診断した.