- 著者
-
荒川 一彦
- 出版者
- 近畿大学商経学会
- 雑誌
- 商経学叢 (ISSN:04502825)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.1, pp.1-13, 2010-07
本稿は,受理後,第8回韓国日本学総合会(韓国日本学会・第81回学術大会)において、一部報告した。2008年9月の "リーマンショック"に始まる世界的な景気後退は, 日本の就労・雇用環境をめぐる多くの問題を顕在化させた。その後, 完全失業率は5%台で推移し, 有効求人倍率も0.4水準である。非正規雇用者は09年初に33%を越え, 年後半には非正規労働者の失職が24万人超に到るなど, 旧来の雇用環境・慣行は劇的に変化している。1990年代中葉からの15年を通じたグローバル化, IT化の進展に伴い, 企業の競争環境は急速に変化した。戦後日本の高度成長を支えた終身雇用, 年功序列, 企業別組合, といった雇用制度は過去のものとなったが, 一方で, その後の市場主義, 成果主義人事制度等への反省もなされつつあり, 今日の経済激動の中で新たな制度が模索されている。今日, 日本の職業人は, 自身の価値観, 職業経験と就労形態を客観的に認識し, 計画し, 開拓して, キャリアを自発的に形成することが求められている。これは高度経済成長下での終身雇用を前提とした旧来の日本型雇用・人事制度の下では重視されてこなかった論点である。本稿は, こうした日本の雇用・労働環境, 人事政策の変化を検討し, キャリア形成と求められる人材像について考察するものである。 (英文) The global recession, triggered by "Lehman Shock" in September 2008, revealed many underlying issues around the work/employment circumstances in Japan. This also rendered obsolete such systems as the lifetime employment, the seniority system, and the company unions, in some part, that had bolstered the Japanese post-war rapid economic growth. Japanese professionals and workers are challenged to autonomously build up their careers by identifying, planning, and developing their own sense of value, occupational experience, and working styles. This paper is to study these changes in the employment /labor conditions and personnel policies of Japan, and discuss career formation and the models of human resources.