- 著者
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荒木 正見
- 出版者
- 日本赤十字九州国際看護大学
- 雑誌
- 日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.1-11, 2005-03-01
この論文は、三浦綾子「夢幾夜」における「合唱の夢」(筆者による仮称)について、夢解釈の手法で解釈する試みである。この「合唱の夢」の構造を確認すると場面は二段階に進行する。一段階目は見知らぬ男から丁寧かつあつかましい手紙が来てやがて彼が登場するところまでである。第二段階目になると花火が上がって教会堂は万国旗で飾られている。すると合唱が天の一角から響く。はじめ「天に栄光、地に平和」といっていたのが、やがて「天に平和、地に平和」と変わり人々は和する。自分は「天国に行っても、平和を叫ばなければならないのか。」と落胆する。二つの段落は共時的に結びついている。特に音楽という、意識無意識の全体を象徴する場面では真の気持ちが語られる。そのように考えれば、見知らぬ男はイエス・キリストであり、さらに作者の他の作品などを参考にすれば、この夢はいつまでも平和が来ないと神に救いを求めるという潜在意識を意味しているといえる。