著者
出口 一郎 竹原 幸生 荒木 進歩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

毎年海水浴シーズンになると,100名を越える尊い人命が海水浴中の事故で失われており,その大部分は,いわゆる離岸流によって引き起こされているといわれている.予め離岸流の発生が予測できる場合は,警告などを出すことにより,事故の発生を未然に防ぐことが可能である.しかし,いくつかの離岸流は狭い範囲で発生し,その持続時間も必ずしも長くはない.この様な離岸流は,遊泳者にとって非常に危険なものとなる.一方,離岸流は沖への漂砂輸送流れとなることから,海岸侵食を議論する上でも重要な流れである.本研究では,飛行船に搭載したビデオカメラによるメソスケールリモートセンシング(100*100m〜400*400mの領域の流れ,波浪の計測)及び周辺海域の波浪情報(波向・波高・周期,平均水位,など)を同時に計測するシステムを構築し,このシステムを用いて継続した離岸流の現地実測を行うと同時に,波浪情報計測システムの有効性を検討するために,平面水槽内での実験を行った.離岸流に関する現地実測では,従来指摘されていたすべての地形性離岸流の計測を行うことができ,さらに突発性離岸流の流況の計測も行うことができた.また,K-GPS相対測位法による海底地形計測法も開発し,観測された離岸流発生地点周辺の海底地形の精測を行い,その上での波浪変形,海浜流の数値計算を行うことにより,海底地形と入射波浪条件が与えられれば十分な精度で離岸流の発生が予測できることを示した.さらに,リモートセンシングから得られる画像処理による海底地形の推定法,平面的な広がりを有する海面情報(特に波高分布)の取得方法などの構築を行い,その有効性について確認している.これらの成果は,今後の極浅海域流体運動の解析に非常に有効な手段を提供するものと考えられる.