著者
平賀 聖悟 黒川 順二 内島 豊 荒木 重人 竹内 信一 牛山 武久
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1855-1868, 1985-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
26

小児VUR 12症例についてレ線透視下膀胱内圧測定 (CG-CM) を行なった. 対象の内訳は非閉塞性VUR 7例, 神経因性膀胱に伴なうVUR 5例の計18尿管であり, 次の結果を得た. 過去においても同様の検査が行なわれたが, 本検査法に基づくVURの分類が膀胱内圧曲線 (CMG) を中心にしておらず, 臨床例と適合しないところもあるので新分類を試みた. すなわち, CMGの静止圧時における低圧逆流をType I, 排尿反射時の高圧逆流をType II, 腹圧による意識圧時の高圧逆流をType IIIとした.VUR起始時の平均膀胱内圧はType I, 25.6mmHg, Type II, 41.4mmHg, Type III, 86.3mmHgであった. その時の平均膀胱容量はType I, 387.9ml, Type II, 245.6ml, Type III, 53.3mlであり, 非閉塞性VURで膀胱容量が大きく, 神経因性膀胱に伴なうVURでは小さい傾向が示された. 本検査法によるVUR起始時の grade はスクリーニングのために行なった one-shot の膀胱撮影乃至は排尿時膀胱尿道撮影と異なる頻度であった. VUR発現の過程におけるどの grade を真の grade とすべきかという問題が生ずるが, CG-CMによりVURの時間的因子を含めた機能的 grading が可能である. VURの各 Type における grade と水腎症の程度とを比較すると, Type Iでは両者がほぼ一致し, Type IIとType IIIでは grade に比し水腎症が軽度であった. VURの各 Type におけるCMGは, Type Iでは大部分正常型及至は弛緩型膀胱, Type IIから Type IIIへかけて痒性膀胱あるいは無抑制膀胱の割合が増加した. 本検査法の最終目標は小児VURの治療方針の決定にある. 臨床症例が少なかったため, 今回は明確な結論は得られなかったが, Type Iで grade の低い場合は経過観察でよいが, 高 grade のものは外科的治療を要し, Type IIから Type IIIへかけて保存療法の割合が増える傾向が示された.