著者
A. Pusztai S. Bardocz 荒田 洋一郎
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.8, no.41, pp.149-165, 1996-05-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
40
被引用文献数
43 90

食物に含まれるレクチンは、生理活性を持つ成分として重要であり、強力な外来性のシグナルとなる。食物中のレクチンの含量は大きく異なるが、消化管全体に劇的な影響を与え、消化管内の細菌の数、体の代謝、健康にも大きく影響する。レクチンの強い効果は、腸におけるタンパク質分解に対する抵抗性、腸の上皮細胞表面 (高等動物から下等生物に至るまで) に発現している内在性受容体に対する特異的、かつ高い化学反応性に由来する。経口であれ、非経口的であれ、取り込まれたレクチンは強力な免疫原となり、その生理作用が複雑にからみあって免疫機能に干渉することもある。しかし、レクチンの初期効果やバイオシグナルとしての能力は、糖鎖との特異的な化学反応の直接の結果である。こういった反応を想定すれば、レクチンを臨床医学的に、病原体、免疫系刺激物質、ホルモン調節因子、代謝活性化物質の阻害剤として利用したり、トランスジェニック植物における内在性の殺虫剤として利用するといったことが将来的に見込める。
著者
Hakon Leffler 荒田 洋一郎
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.9, no.45, pp.9-19, 1997-01-02 (Released:2010-01-05)
被引用文献数
56 74

ガレクチンファミリーに属するタンパク質は、β-ガラクトシドに対して親和性を持ち、一次配列上に保存された領域を持つ。哺乳類ではこれまでに10種類のガレクチンが知られており、他の種では、鳥類、両生類、魚類、線虫、海綿、菌類などでガレクチンが見つかっている。ガレクチンは他のレクチンと違って細胞質に存在する。細胞質からはゴルジ装置を介さない経路で分泌されるが、核や特異的な細胞内部位に移行することもある。細胞外コンパートメントにおけるガレクチンの役割が注目を集めている。β-ガラクトシドを含む複合糖質を架橋することにより、細胞の接着や情報伝達を調節しているらしい。しかし、細胞質や核でも働いている可能性がある。ゴルジ装置を介さないガレクチンの分泌経路自体も非常に興味が持たれるところであるが、ほとんど何もわかっていない。ガレクチンは当初はβ-ガラクトシド結合活性から発見されていたが、一次構造の特徴がわかるようになり、さらに分子生物学的手法が使えるようになったので、これまでとは異なった興味深い方法で発見され始めている。ガレクチン、ガレクチン阻害剤、抗ガレクチン抗体が、癌や炎症性疾患などで治療薬や診断薬として使える日が近い将来来るかもしれない。