- 著者
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荒金 直人
- 出版者
- 慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
- 雑誌
- 人文科学 (ISSN:09117210)
- 巻号頁・発行日
- no.25, pp.31-55, 2010
1. 『想像力』2. 『想像的なもの』(A.心象について)3. 『想像的なもの』(B.画像について)画像とは何か? - サルトルは,この問いへの答えを,彼なりの仕方で提供してくれているのだろうか。 1936年の『想像力』における問題提起は極めて興味深く,その問題の分析が本格的に展開される1940年の『想像的なもの』(邦題『想像力の問題』)に期待が寄せられる。しかし我々がそこに見出すのは,なかなか突破口を開こうとしない,開いたはずの突破口を渡ろうとしない,慎重でじれったいサルトルである。想像力という観点から画像の問題に接近しようというのは,やはり無理だったのか。心的な像(心象)の経験と物質的な像(画像)の経験とが類似的な志向的構造を有しているという発想自体に,無理があったのだろうか。本稿では,『想像力』と『想像的なもの』においてサルトルが展開する像についての分析が,「画像とは何なのか」という我々の問いに対して何を与えてくれるのか,それを探ってみたい。