著者
荻ノ迫 善六 澤田 均 山下 雅幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.319-324, 1996-01-31
参考文献数
23
被引用文献数
1

富士山麓にはシロクローバが標高2,400mまで分布しており,標高との関連で自生集団の変異パターンを分析するのに最適である。本研究は,富士山麓の異なる標高から株で収集した5集団について,標準環境下で比較試験を行うことにより,以下の仮説を検証することを目的とした。(1)シロクローバの高地集団では個体が矮小化する傾向にある。(2)高地集団と低地集団ではバイオマス分配パターンが異なり,環境ストレスを強く受ける高地集団では根部への分配割合が高く,頭花への分配割合が伝いのに対して,競争のより厳しい低地集団では葉部(葉柄を含む)への分配割合が高いであろう。(3)クローナル成長パターンにも両集団間に差があり,高地集団は短いストロンを多数分枝する密集型の成長パターンを示すのに対して,低地集団は長いストロンを少数分枝させるゲリラ型の成長パターンを示すであろう。実験の結果,3つの仮説は支持された。したがって,シロクローバの高地集団が矮小化しており,比較的密集型のクローナル成長パターンを持つことが確認された。さらに,頭花の生産量,頭花へのバイオマス分配,葉部への分配が少ないが,根部への分配は多いことが確認された。このような集団間差をもたらす背景について考察した。