著者
倉林 敦 住田 正幸 広瀬 裕一 浮穴 和義 澤田 均 中澤 志織 逸見 敬太郎 ベンセス ミゲル マローン ジョン ミンター レスリー ド プリーツ ルイス
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

フクラガエルが生殖時に用いる糊の物理的特性と化学成分、および糊候補遺伝子の探索を行った。本研究の結果、フクラガエル糊の接着強度は、およそ500g/cm2であり、その主要構成要素は蛋白質であることが分かった。さらに、糊物質候補は、他のカエルで報告されていた皮膚分泌物と似た3種の蛋白質と、1種の新規蛋白質があることが示唆された。また、アメフクラガエルについて、人工繁殖を試みた。その結果、Amphiplexと呼ばれるゴナドトロピン誘導ホルモン作動薬とドーパ混合ホルモン剤が、本種の排卵を促すことを明らかにし、世界で初めて飼育下での人工的な交尾の促進と、営巣・産卵までの観察に成功した。
著者
倉林 敦 熊澤 慶伯 森 哲 土岐田 昌和 澤田 均
出版者
長浜バイオ大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

フクラガエル属(Breviceps)は、皮膚から分泌する糊によって雌雄が体を接着して交尾する、奇妙な四足動物である。我々は、発見以来60年間謎のままであったフクラガエル糊について、その物理的特徴と、構成蛋白質、およびその候補遺伝子を明らかにしつつある。本研究では、アフリカにおいてフィールドワークを行い、生殖用の糊という形質の、起源・要因・過程など、適応進化の実体を生態学・系統学・分子遺伝学の側面から解明する。この過程で、生態学・形態学的解析、新種記載、人工繁殖研究などもあわせて実施し、謎の多いフクラガエルとその近縁属の自然史について新たな知見を加えることを目的としている。本年度は、11月に南アフリカの西ケープ州、および、東ケープ州においてフクラガエル類の観察、採取を行なった。西ケープ州では、ジャイアントフクラガエル・ローズフクラガエルに加え、昨年採取はできたものの、実験前に死亡したクロフクラガエルを採取した。さらに、ケープタウンから30 kmほどの地点で、ナマクワフクラガエルを採取した。本種の分布はケープタウンから300kmほど北からと考えられていたため、これは本種の新産地の発見となった。東ケープ州では、ヘイゲンフクラガエルの採取を試みたが、成功しなかった。また、北ケープ州に分布するサバクフクラガエルを現地共同研究者に採取していただき、実験に供した。各種の糊分泌物を採取し、その強度を測定した。その結果、上記のうち1種(特許申請の関係で公表しない)は、極めて接着力の強い糊を持ち、その接着力は、アロンアルファなどの市販の接着剤を上回ることさえあった。また、フクラガエルの糊の接着力は、1)体の体積(重量)に比例して強くなる、生息地の土壌の硬さに比例して強くなる、という2つの仮説があったが、本年の研究からはそのどちらの仮説も否定された。
著者
荒木 聡彦 塩井 成留実 澤田 均 松井 太衛
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

「がん細胞や白血球の血管貫通」における血管壁の開口現象の分子機構は、よく分かっていない。血管貫通においては、出血性ヘビ毒ADAMが血管開口を引き起こすことから、ADAMによる血管細胞間解離を解析した。既にLRP6の切断が血管壁開口現象に必要であることを示唆していたが、今回はADAMの結合標的を探索した。その結果ADAMBP1細胞膜タンパク質(仮称)がヘビ毒ADAMに結合することを示すとともに、ADAMBP1阻害抗体により細胞間解離等が阻害されることを示し、ヘビ毒ADAMの結合受容体であることを示唆した。また他にADAMに結合する候補タンパク質として、ADAMBP2,3,4,5を見出した。
著者
市原 実 和田 明華 山下 雅幸 澤田 均 木田 揚一 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.41-47, 2007
被引用文献数
3

種子の乾熱処理および火炎放射処理が帰化アサガオ類(ホシアサガオ(<i>Ipomoea triloba</i>),マメアサガオ(<i>I. lacunosa</i>),マルバアサガオ(<i>I. purpurea</i>),マルバアメリカアサガオ(<i>I. hederacea</i> var. <i>integriuscula</i>)およびマルバルコウ(<i>I. coccinea</i>))の発芽に及ぼす影響と,火炎放射後の湛水が種子の生存に及ぼす影響について調査した。80&deg;Cで30分間乾熱処理した場合,5草種の発芽率(吸水,膨潤した種子の割合)は21.1&sim;97.8%であった。マメアサガオ(21.1%)とマルバアサガオ(47.8%)を除く3草種は,72.2&sim;97.8%と高い発芽率を示した。一方,火炎放射処理を3秒間行った場合,発芽率は94.4&sim;100.0%と5草種ともほぼ完全に発芽した。さらに火炎放射処理後の種子は湛水条件下に2ヶ月間埋土されることにより,5草種全てにおいて100%死滅することがわかった。本研究より帰化アサガオ類の防除において,種子散布後に圃場地表面を火炎放射処理し,その後湛水することが有効であることが示唆された。
著者
鈴木 卓磨 川合 里佳 足立 有右 足立 佳奈子 山下 雅幸 澤田 均
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.566, 2004

近年、日本各地で外来種の侵入問題が顕在化してきた。我々は外来種の侵入が確認された河原の植生構造を把握し、急流な東海型河川の河原植生に関するデータベースの作成を目的として、一昨年度より静岡県内の主要河川において植生調査を行っている。特に、侵入種として問題視されているシナダレスズメガヤ<i>Eragrostis curvula</i>の優占地に注目し、本種の分布拡大が県内の河原植生にどのような影響を及ぼしているのかを検討している。<br> 河原の植生調査は、静岡県西部の天竜川、中部の安倍川、東部の富士川の3河川の下流域で2002年から2003年の春と秋に行った。また、安倍川と富士川については中流域にも調査地を設けた。調査方法は河流に対して垂直にコドラート(1×1m)を並べるライントランセクト法を用い,コドラート内の種数、個体数及び植被度を調査した。<br> 調査の結果、3河川とも1年生草本が最も多く、次いで多年草が多かった。今回の調査地では、外来種が出現種数の過半数を占めるコドラートが多く、帰化率は天竜川の調査地で10%、安倍川と富士川ではともに30%以上で、外来種の侵入程度が極めて高いことが明らかとなった。 特にシナダレスズメガヤについては、河岸近くで大きな集団を形成しているところが中・下流域で広く確認された。各河川の生育地において本種の形態を測定したところ、平均で草丈138cm、株周り55cmと大型化した個体が多く、河原植生に及ぼす影響が大きいものと推察された。<br> 今後、河川植生の保全活動のためにも、生育している個々の種を継続して詳細に調査していくことが必要である。特に帰化率の高かった河原では外来種の優占化,それに伴う種多様性の低下が懸念されるため、在来種と外来種双方からの研究アプローチが不可欠であろう。<br>
著者
辻 繁勝 大河内 英作 澤田 均
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1986

Jimpyマウスは中枢神経系に著しいミエリン膜形成不全を発現するがCNS中の成熟オリゴデンドログリアが極端に少ない事および発症期に対応してミクログリア或いはマクロファージの数が著しく増加している事が認められている。我々は発病期のJimpyマウス中枢神経系に起こる種々のプロテアーゼ活性の変動を探る事に依って、この疾患の病因を追求しようと考えて実験を行い以下の結果を得た。1.トリプシン用基質であるBoc-Phe-Ser-Arg-MCAを基質として酸性(pH6.8)プロテアーゼ活性を脳ホモジネートの各細胞分画に就いて測定したところ発症期のJimpyマウス脳のミトコンドリア分画中では対照マウスに比較して有意に活性上昇している事が認められた。然し細胞質画分中の活性には差異は見られなかった。2.キモトリプシン用基質のSuC-Leu-Leu-Val-Tyr-MCAを基質とする中性(pH7.4)プロテアーゼ活性もJimpyマウス脳中ミトコンドリア画分で有意な増加を示した。この活性を更にミエリン膜画分に就いて測定したところ【Ca^(++)】-非依存性の中性プロテアーゼ活性と【Ca^(++)】添加によって活性が現われる【Ca^(++)】-依存性中性プロテアーゼ活性が存在する事が認められいずれもJimpyマウス脳中で、対照マウスに比較して有意に増加している事が確かめられた。3.【Ca^(++)】-非依存性プロテアーゼ活性には中性域の他に酸性域(pH5.5)にも活性のピークが在る事が判った。4.【Ca^(++)】-依存性中性プロテアーゼに就いて種々のインヒビターに対する感受性を検討したところ、EDTA,E-64,Leupeptin,Antipainなどによって強く阻害される事が判った。従って、この酵素はいわゆるCANP酵素に極めて類似した性質を有する事が推定される。以上の結果からJimpyマウス脳では発症期に対応してミエリン膜自体の自己破壊傾向が高進している事が推測された。
著者
市原 実 和田 明華 山下 雅幸 澤田 均 木田 揚一 浅井 元朗
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.41-47, 2008-06-30

種子の乾熱処理および火炎放射処理が帰化アサガオ類(ホシアサガオ(Ipomoea triloba),マメアサガオ(I. lacunosa),マルバアサガオ(I. purpurea),マルバアメリカアサガオ(I. hederacea var. integriuscula)およびマルバルコウ(I. coccinea)の発芽に及ぼす影響と,火炎放射後の湛水が種子の生存に及ぼす影響について調査した。80℃で30分間乾熱処理した場合,5草種の発芽率(吸水,膨潤した種子の場合)は21.1〜97.8%であった。マメアサガオ(21.1%)とマルバアサガオ(47.8%)を除く3草種は,72.2%〜97.8%と高い発芽率を示した。一方,火炎放射処理を3秒間行った場合,発芽率は94.4〜100.0%と5草種ともほぼ完全に発芽した。さらに火炎放射処理後の種子は湛水条件下に2ヶ月間埋土されることにより,5草種全てにおいて100%死滅することがわかった。本研究より帰化アサガオ類の防除において,種子散布後に圃場地表面を火炎放射処理し,その後湛水することが有効であることが示唆した。
著者
荻ノ迫 善六 澤田 均 山下 雅幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.319-324, 1996-01-31
参考文献数
23
被引用文献数
1

富士山麓にはシロクローバが標高2,400mまで分布しており,標高との関連で自生集団の変異パターンを分析するのに最適である。本研究は,富士山麓の異なる標高から株で収集した5集団について,標準環境下で比較試験を行うことにより,以下の仮説を検証することを目的とした。(1)シロクローバの高地集団では個体が矮小化する傾向にある。(2)高地集団と低地集団ではバイオマス分配パターンが異なり,環境ストレスを強く受ける高地集団では根部への分配割合が高く,頭花への分配割合が伝いのに対して,競争のより厳しい低地集団では葉部(葉柄を含む)への分配割合が高いであろう。(3)クローナル成長パターンにも両集団間に差があり,高地集団は短いストロンを多数分枝する密集型の成長パターンを示すのに対して,低地集団は長いストロンを少数分枝させるゲリラ型の成長パターンを示すであろう。実験の結果,3つの仮説は支持された。したがって,シロクローバの高地集団が矮小化しており,比較的密集型のクローナル成長パターンを持つことが確認された。さらに,頭花の生産量,頭花へのバイオマス分配,葉部への分配が少ないが,根部への分配は多いことが確認された。このような集団間差をもたらす背景について考察した。
著者
澤田 均
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.370-375, 1991-01-31

本研究は,ペレニアルライグラスの空中分げつの発生と,その潜在的な散布距離を明らかにすることを目的とした。牛と羊をそれぞれ集約的に放牧管理している草地を調査対象として,1988年と1989年の11月にペレニアルライグラスの空中分げつを調べた。空中分げつは両年とも頻繁に観察された。栄養繁殖体(空中分げつ)をもつ親分げつは,通常,その先端部にただ1個の栄養繁殖体を出現させた。栄養繁殖体の潜在的な散布距離は平均4.5-4.8cm(1988年),3.6-4.2cm(1989年)と短いが,最大値はそれぞれ15.0cm,15.5cmにも達した。栄養繁殖体の密度は空間的に著しく異なり,1988年は0.0-34.4/m^2,1989年は0.0-57.8/m^2であった。空中分げつによる栄養繁殖は,調査したペレニアルライグラス個体群の大きさを維持する上で,意義のあるものと考えられた。