著者
前川 圭一郎 荻野 昌秀 田中 善大
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.105-118, 2023 (Released:2023-10-13)
参考文献数
17

本研究では,中学校において学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS)の第1層支援に加えて,データに基づく学年規模ポジティブ行動支援(GWPBS)を1年生に対して実施し,その効果を検討した。GWPBSを効果的に実施するために,米国の管理職への規律指導に関する照会(Office Discipline Referral: ODR)を基にした生徒指導記録の件数のデータを用いて支援に関する意思決定を行った。GWPBSとしてキャンペーン形式の第1層支援に加えて第2層支援を実施した。GWPBSの効果を検討するために,生徒指導記録件数の測定に加えて,生徒の適応・不適応に関する質問紙尺度を実施した。GWPBSを実施した結果,対象学年(1年生)の生徒指導記録件数が減少し,特にSWPBSのみでは十分な減少が見られなかった標的行動に十分な減少が見られた。質問紙尺度については,GWPBSの対象学年において,他の学年では見られなかった不適応の指標の改善が確認された。結果から,本研究で実施したデータに基づくGWPBSが,対象学年の生徒の不適切な行動の減少と,それに伴う主観的な不適応の改善に効果があったことが示された。【インパクト】本研究は,米国の学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS)で標準的に実施されているデータに基づく意思決定を含む形での学年規模ポジティブ行動支援(GWPBS)の実践を日本の学校において実施し,その効果を検証したものである。日本の学校におけるデータに基づくGWPBSに関する実践研究は,これまでに例のないものであり,本研究の結果は,今後日本におけるSWPBSの普及,発展にとって重要なものである。
著者
荻野 昌秀
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.257-267, 2021-02-28 (Released:2021-08-31)
参考文献数
23

発達支援のニーズのある児の早期発見、早期支援のために各自治体で5歳児健診が行われているが、5歳児で発達障害やその疑いが確認された場合には就学までに支援を受けられる期間が短い。そこで本研究では、保育所における4歳児時点での早期発見の仕組みに活用できる保育士記入式の発達チェックリストの開発を行った。因子分析の結果、4因子15項目が抽出され、再検査信頼性の検討や、関連が想定される尺度との相関分析などから、妥当性および信頼性が確認された。また、本尺度は他の同様の尺度と比較して短時間で回答できることが確認された。さらに、因子ごとのカットオフポイントについては感度と特異度の優れたものを設定した。今後はこのチェックリストの活用や、専門家巡回と組み合わせた際の効果の検証が望まれる。
著者
荻野 昌秀
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.177-186, 2020-11-30 (Released:2021-05-25)
参考文献数
16

近年、特別な支援を要する児への対応が求められているが、現場で活用できるリソースには限界があり、コンサルテーションのニーズは高まってきている。本研究では、保育所における行動コンサルテーションの効果を明らかにすることを目的とした。また、コンサルティ自身が機能的アセスメントを実施できるようになるためのコンサルテーションのあり方についても考察した。クライエントは4歳児クラス(特別な支援を要する幼児3名を含む)、コンサルティは担任保育士2名であった。対象クラスは20名であり、一部の児の離席、退室や攻撃行動、およびクラス全体の頻繁な私語がみられていた。7回のコンサルテーションにより、適応行動への注目や代替行動の強化など、児の行動の機能に応じた対応が可能となり、対象児の離席、退室や攻撃行動、クラス全体の私語が減少した。今後は保育士自身が機能的アセスメントを行うことが望まれる。