著者
鹿住 祐子 板垣 信則 大森 正子 和田 雅子 星野 斉之 御手洗 聡 菅原 勇 石川 信克 森 亨
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.891-896, 2007-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

〔目的〕平成12年度(2000年)結核緊急実態調査時の慢性排菌患者におけるMDR-TBとXDRTBの頻度を調べる。〔対象および方法〕平成12年度結核緊急実態調査時の慢性排菌者1234例における結核菌434株を用いて薬剤感受性試験(小川培地使用の比率法,MGIT法,プロスミックNTM)を行い,MDR-TBとXDR-TBを決定した。被検株の条件は,1999年末現在保健所に登録されている結核患者のうち1999年の1年間に菌陽性であり,1998年1月1日以前に登録された患者とした。少なくとも登録されてから2年以上経過し,培養陽性だった患者である。〔結果・考察〕薬剤感受性試験が実施された434株のうちINHとRFPに耐性でMDR-TBと判定された株は321株(74.0%),そのうちの180株(56.1%)がLVFX耐性,かつ,KMあるいはAMKのどちらか(または両方)に耐性のXDR-TBであった。MDR-TB321名のうち,初回登録患者が165名,再登録患者は143名,不明が13名であった。XDR-TB180名の内訳は初回登録患者が95名,再登録患者は78名,不明は7名であった。初回登録患者では1990年代がMDR-TB94名(57.0%)とXDR-TB49名(51.6%)ともに半数以上をしめ,再登録患者では1960年代と70年代がMDR-TB62名(43.4%)とXDR-TB41名(52.6%)であった。日本で使用の少ないAMKの耐性頻度が高率だったのはAMKの使用によるものかSM・KMの交差耐性か解明できなかったが交差耐性を否定できない。
著者
鹿住 祐子 前田 伸司 菅原 勇
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.551-558, 2006-09-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
27
被引用文献数
3

〔目的〕抗酸菌の同定にrpoB遺伝子シークエンスを利用できるか評価を行うために16SrRNAシークエンス(RIDOM)と比較し,さらにこの2つの方法を使い分けてDDH法にて菌種不明であった38臨床分離株を同定した。〔対象および方法〕ATCC標準菌株を中心とした抗酸菌(106株)とNocardia属,Rhodococcus属,Gordona属合わせて計112株を用いて,rPoB遺伝子シークエンスと16SrRNAシークエンスを行った。そしてDDH法不明菌38臨床分離株のシークエンス結果を2つの方法のデータベースで相同性を調べ,菌種を決定した。〔結果・考察〕研究対象となった112株のうち16SrRNAシークエンス(RIDOM)では69,6%,rpoB遺伝子シークエンスでは89。3%が同定可能であった。16SrRNAシークエンス(RIDOM)では同定できないM.kansasiiなど11菌種をrpoB遺伝子データベースでは分けることが可能であったが,2つのシークエンスを用いてもM.tubereulosisなど12菌種を分けることができなかった。DDH法不明菌種の38株はM.heckeshomense,M.branderiなど21菌種として同定され,両方の方法を組み合わせることによって97.4%が同定可能であった。
著者
鹿住 祐子 大友 幸二 高橋 光良 御手洗 聡 菅原 勇 和泉 純子 安藤 昭子 長谷川 秀浩
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.437-441, 2004-07-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
12
被引用文献数
2

[目的] 同定困難であったMycobacterium skinskuenseの細菌学的解析を行った。 [対象と方法] 37歳女性, 右下肢皮膚潰瘍より分離された抗酸菌 (被検株753) とM.marinum (ATCC927), M.ulcmns (ATCC19423), M.skinskuense (ATCC33728) をDDH, 16SrRNA法, rpoB法, 薬剤感受性試験, 生化学的・生物学的検査を用いて比較した。 [結果] DDH法によって上記の4株はM.marinumとして判定されたが, 遺伝子配列の検索方法 (16SrRNA法・rpoB法) ではこの被検株 (753) が3菌種のうち, いずれであるかを決定できなかった。しかし, 16S rRNA法の中のPortaelsらの方法によってこの3菌種を分類することが可能であった。この方法によって被検株 (753) はM.skinskuenseと同定された。薬剤感受性試験と生化学的・生物学的性状検査においても被検株はM.skinskuenseと同定された。 [考察] DDHにてM.msrinumと同定された抗酸菌で, 発育条件が28℃ 培養で2週間かかり, 暗所培養にて黄色のコロニーを形成するScotochromogenであった場合, 塩基配列レベルの検査と従来法の実施が必要である。