- 著者
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白濱 謙一
菅原 義則
土田 久幸
川崎 圭子
- 出版者
- 一般財団法人 住総研
- 雑誌
- 住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.71-81, 1991 (Released:2018-05-01)
バルカン半島の中部からトルコにかけて,特異な様式の伝統的住居がある。石造りの下階に木構造の上階が載った,いわば混構造の建築である。この型の住居の歴史はおそらくビザンチンにまで遡ると思われる。また,わずかずつ違いを見せながらもその分布する地域は,アルバニア,ギリシア,ユーゴスラビア,ブルガリア,ルーマニアそしてトルコにまたがっており,周知のようにこれらの国々は先ごろまで複雑な国際関係にあった。これまで伝統的住居について,自国の文化の範囲で研究されてはいたが,全地域にまたがる包括的な研究は少ない。当研究室では,かねてから住文化における異文化の移入とその後の変容について興味をもっており,この視点から上記の特異な型の住居文化の動向を探りたいと考えた。研究の内容と方法(a)マケドニア(ユーゴ領)の伝統的住居の現地集落調査(1989年8~9月)(b)スコピエ大学建築学科の資料分析 (C)ギリシア北部とトルコに分布する同型の住居と比較以上より,マケドニアの伝統的住居の類型とその分布を把握し,その特徴を周辺地域と比較してこの地域における住文化の交流の様相を解明することが目的である。研究の結果 次のことがわかった。(1)マケドニア住居は,“chardak”(チャルダック)と称する家具の無いホールを持つ。(2)チャルダックはOH型(Outer hall type)とIH型(Inner hall type)がある。(3)他の地域と比較するとマケドニア住居の規模は小さい。それはキリスト教の1家族型であるためである。(4)NH型(No hall type)とCH型(Center hall type)を含めて4つの型の広域分布図を作成した。(5)OH型は非常に古い型と考えるが,現在でも広く存在しているのは素朴な機能主義を持っていたからであろう。