著者
菅原 達也
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.177-183, 2013 (Released:2013-08-16)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

スフィンゴ脂質は, 真核生物の細胞膜構成成分の一つであり, 細胞の分化やアポトーシスなどの生命現象に深く関わっていることが知られている。近年, 食品機能成分としても注目されつつあり, とくに皮膚バリア向上作用が期待されている。したがって, 経口摂取されたスフィンゴ脂質の消化と吸収の機構を明らかにすることは, その食品機能性を理解する上でも重要といえる。グルコシルセラミドやスフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質は, 小腸内で消化を受け, その構成要素であるスフィンゴイド塩基にまで加水分解された後に小腸上皮細胞に取り込まれる。しかし, その分解効率は低く, 吸収率も低い。スフィンゴシンと比べて, それ以外の化学構造のスフィンゴイド塩基はP-糖タンパク質による排出を受けやすいため, 吸収はさらに低いことが示唆されている。スフィンゴ脂質の有効利用のためにも, その選択的吸収機構の詳細について, 今後明らかにされる必要がある。