著者
菅沼 健太郎
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.161, pp.63-89, 2022 (Released:2022-05-20)
参考文献数
26

本論文では秋田県横手市方言の有核動詞の過去形,非過去形のアクセントパターンについて論じる。同方言の有核動詞のアクセントは,過去形におけるそのパターンが多様である点,さらにその一方で非過去形では一貫したパターンが現れる点で特徴的である。具体的には,過去形では語幹の拍数や末子音の種類などに応じて次々末拍,次末拍,末拍のいずれかに下がり目が置かれる。その一方で非過去形では一貫して次末拍に下がり目が置かれる。本論文ではこれらのアクセントパターンが弱強フットを中核とした規則群によって導かれることを示す。さらに,検討課題が残されているものもあるが,本論文で提案した規則が形容詞のアクセント,および他の動詞活用のアクセントを説明するためにも有効であることを示唆する。