著者
菅藤 健一 森丈 弓
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.11-19, 2015

<p>非行臨床における風景構成法を用いた査定上の知見を得ることを目的として,一般の高校生と比較した非行少年の風景構成法の特徴を抽出し,そうした特徴が非行少年のどのような心性と関連しているかについて分析を行った。描画に関する指標について因子分析を実施した結果,3因子が抽出され,それらは「流動性」,「奥行き」,「広がり」である。これら3因子によって風景構成法を分析していくことが可能である。非行少年と高校生の違いは,「流動性」と「奥行き」であることが判明した。これによって非行少年は高校生に比し,与えられた課題を解決するに際して先行きの見通しが乏しく,刺激との距離を確保して行動を吟味することができないため,いきおい直截的・即行的な振る舞いが多い傾向があると指摘される。因子分析によって抽出された3因子を用いて解釈の枠組みが構成されたことは,風景構成法を解釈する際に,注目すべき描画の特徴について着眼点が明確化されたことを意味している。また,風景構成法を継続的に試行する場合に,枠組みに沿って描画を見ていくことで,変化を客観的に捉えることも可能となる。これまで非行少年の風景構成法については,各アイテムの意味を臨床的な視点から考え,統合して解釈するという手法が一般的であったが,今回,因子分析によって得られた枠組みに則って解釈を行うことで,より安定した解釈への可能性が高まったといえる。</p>