- 著者
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菅野 〓司
- 出版者
- 科学基礎論学会
- 雑誌
- 科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.49-55, 1999-03-31 (Released:2010-01-20)
- 参考文献数
- 7
以前の報告(1)で, 科学のサイバネティック構造を中心に, 自然科学の有する諸々の特性を論じてきた。通常科学が対象とするのは実在の自然そのものではなく, 実在の自然から得た情報を基に築かれた「対象的自然」である。しかし, その情報は完全ではなく, 対象的自然は科学の進歩とともにその水準に応じて変化発展してきた。科学の理論体系はその対象的自然に対して, 相対的ではあるが完全性, 健全性 (公理や推論規則が妥当), 無矛盾性を備えた完備な体系である。自然科学を実在の自然におけるサイバネティックシステムと見るならば, 認識主体 (人間) が科学理論と方法を用いて自然から得た情報をフィードバックしながら, 自然のなかを切り拓いて進む自己制御系といえるだろう。この場合, 認識主体と理論体系がその本体をなし,「理論-演繹-検証」の方法がフィードバック機構の役を果たしているといえるだろう。それを踏まえて本稿では, 科学革命の過程とそのダイナミックな構造をできるだけ解明することにする。特に, 科学革命の本質を, T・クーンのパラダイム転換とは別に, 科学の理論構造の転換という側面から捉え直す。科学革命は「旧理論から新理論への自己否定的発展」であるが, それはいかにして可能かを考察する。そして, 理論転換と科学革命のタイプを, 物理学を例にとり, その契機と構造によって分類する。