著者
斎藤 広信 高橋 敦史 阿部 和道 物江 恭子 菅野 有紀子 横川 順子 大平 弘正
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.65-69, 2011 (Released:2011-02-18)
参考文献数
14

症例は65歳,男性.両肩関節痛を認め,近医整形外科で受診し,変形性肩関節症と診断された.1カ月後から両膝・両手首の関節痛も出現し,肝機能異常と貧血も認めたため入院した.免疫グロブリンの低下およびカルシウム値の増加から血液疾患を疑い,骨髄穿刺検査を施行した.骨髄検査ではCD138陽性の異型形質細胞がびまん性に増生し,造血細胞巣の70%以上を占め,頭部レントゲン検査での打ち抜き像,尿中Bence Jones蛋白陽性,血清蛋白免疫電気泳動と併せ,Bence Jones型の多発性骨髄腫と診断した.肝機能異常については,経過から薬物性肝障害は考え難く,自己抗体も陰性で画像所見においても異常所見が無いことから,肝生検を施行した.肝組織所見では,類洞内に骨髄と同様に多数のCD138陽性の異型形質細胞が浸潤し,肝細胞壊死を伴っていた.以上のことから,本例の肝障害の原因は多発性骨髄腫によるものと判断した.肝生検にて骨髄腫が肝障害の原因として診断された症例は稀であり報告する.