著者
菅野 正 (訳)
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.79-88, 1987-12

十九世紀末の中国の戊戌維新運動は失敗に終ったとはいえ,それは,中国近代の民族覚醒、改革提唱や思想啓蒙等の面では,いずれも一定の歴史的役割を果した。最近何年来,中国の歴史家は,清末の維新運動の歴史について研究を深め,その性質、役割、さらには各種の人物や思想に対して幅広い検討を進め,それに関する史料や史実について,発掘や考証を深めてきた。とくにここ数年来,北京故宮博物院で,維新派指導者康有為の一連の新史料が次々に発見され,それには,すでに失なわれたと思われていた康有為の光緒帝に進呈した『日本変ポのランド政考』『波蘭分滅記』『列国政要比較表』等の原本や,さらに康有為の上奏した『傑士上書彙録』の内府抄本が含まれ,我々に,彼の変法思想について,一歩進めた認識をもたしめることができるようになった。以下で,私は,康有為を筆頭とする中国の維新派が,日本の変法維新を模倣せんと主張した思想に重点をおいて述べたいと思う。