- 著者
-
菅野 長右ヱ門
大武 由之
- 出版者
- 公益社団法人 日本畜産学会
- 雑誌
- 日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.282-296, 1981-04-25 (Released:2008-03-10)
- 参考文献数
- 17
牛乳脂肪球皮膜から得た可溶性蛋白質(SGP)の抗体と反応する蛋白質がホエーに存在することが見出され,これをanti-SGP reacting protein(A蛋白質)と名付けた.A蛋白質の大部分は耐熱性のプロテオースペプトンの成分-3に含まれているが,成分-5と-8にも存在する.ここでは,3成分間のA蛋白質の性質の差異およびA蛋白質とSGPの構造的•免疫学的関連を明らかにするために,各成分をBio Gel A-0.5mによるゲル〓過およびDEAE-celluloseクロマトグラフィーで分画した画分を用いて研究した.得られた各成分の画分を一元平板免疫拡散,二重免疫拡散,免疫電気泳動,およびDisc電気泳動で分析した結果は互に一致していたことから,A蛋白質には移動度の小さいバンド(SMB)とバンド3の2つの蛋白質が関連していることが示唆された.また各画分の沈降線は各成分の画分間においてさえ融合していたから,A蛋白質は同一の抗原決定群をもっていることが判明した.成分-3をDEAE-celluloseクロマトグラフィーで分画した画分の免疫電気泳動パターンにおける沈降線の移動度は溶出された画分の順に増大していた.このことから,多様な形のA蛋白質が存在することが判明した.さらに,A蛋白質とSGPの構造的関連をSDSPAGEで調べた結果,少なくとも2種の糖ペプチド(band AおよびB)が両者に共通していた.したがって,A蛋白質が同一の抗原決定群をもつにもかかわらず,多様な形をとることは,A蛋白質が主要な2種の糖ペプチドとその他のポリペプチドの分子間会合によって形成されていることに起因するものと考えられた.またA蛋白質は血清に由来する蛋白質ではなかった.