著者
菊地 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.64, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】本研究では、子どもと関わる大人の中で頻繁に話題にあがる「第一反抗期」が、子どものいつ頃のどのような状態を指しているのかを確認し、第一反抗期の子育てにおける親の対応について、事例を通して検討する。【方法】認可外保育所の保育士と対象児の母親による、第一子R(男)の記録について、第一反抗期の子どもの姿や大人(特に親)の対応を分析する。なお今回用いる資料は、Rの反抗的態度が頻出し始めた1歳10カ月~認可外保育所保育終了時の3歳8カ月の1年10カ月間の記録である。【結果】第一反抗期とは、子どもの自己表現手段のひとつであり、その態度はきょうだいの有無などの外的因子と個々の気質などの内的因子の双方が影響し、多様であることが解った。その出現時期は、0歳児から既にみられる拒否や抵抗という態度から、2歳過ぎの不満や不安の表現まで、幅が広い。子どもの表現・態度を自己主張とするか、反抗的態度ととらえるかは、子の発達への理解度、子と離れる時間の有無、精神的ゆとりの有無などによって変容する親の主観に左右されると考えられ、また、子どもの反抗的態度の激しさと、親の子育てに関する悩みやストレスの多さとは、必ずしも一致しないことがいえた。次に、Rの記録を発達段階を追って(1)反抗の始まり、(2)弟の誕生と反抗の多様化、(3)自立の進行と反抗、の三段階に分けて検討した結果、次の実態が捉えられた。・弟の誕生の前後で、反抗の表れ方が顕著に異なる。・日本語の文章力がつくとともに反抗の仕方が複雑化する。・反抗する相手は、「甘え」が許されると自己判断した特定の大人である。今後の課題は、今回の対象児Rとともに弟の反抗的態度も合わせて追跡し、きょうだい関係と第一反抗期についての探求である。