著者
菊池 そのみ
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.113-134, 2019

本稿は古代語(上代日本語、中古日本語)における「ての(「活用語連用形+て+の+名詞」)の形式について用例を整理し、古代語における活用語の連体形による連体修飾との比較と現代語における「ての」の形式との比較とを実施し、以下の2点を明らかにした。まず、古代語における「ての」は時を表す副詞節(「AてのB」)となる場合に異なる2つの時点をつなぐ働きをするという点で活用語の連体形による連体修飾とは異なる時間関係を表す場合のあることを明らかにした。次に古代語と現代語との比較から現代語の「ての」には動作性名詞と非動作性名詞とがどちらも下接するのに対して古代語の「ての」には非動作性名詞のみが下接することを指摘した。更に「ての」による連体化には下接する名詞によって「連用修飾節の連体化」と「補文の連体化」との2つのタイプがあることを示し、これに照らすと現代語の「ての」は2つのタイプを持つのに対して古代語の「ての」は「補文の連体化」のみを持つことを明らかにした。本稿は日本言語学会第156回大会において口頭発表した内容の一部に加筆し、修正を施したものである。