著者
田川 拓海
出版者
Graduate School of Humanities and Social Sciences (Japanese Linguistics), University of Tsukuba
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-14, 2019-01-31

生成統語論の研究において、日本語によく見られる音形を持たない名詞句(ゼロ代名詞)の項としての性質は、音形を持つ名詞句と基本的には変わらないと考えられてきた。それに対し本論文では、少なくとも1) 状態のタ節、2) 「-方」名詞句という独立した2つの文法環境においてゼロ代名詞は可能だが音形を伴った名詞句の出現が許されないケースがあることを示す。さらに、現代日本語(共通語)における右方節点繰上げ構文の基本的な特徴について記述・整理を行い、この環境におけるガ/ノ交替も音形の有無により容認度が異なる現象の1つである可能性を指摘する。
著者
菊池 そのみ
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.113-134, 2019

本稿は古代語(上代日本語、中古日本語)における「ての(「活用語連用形+て+の+名詞」)の形式について用例を整理し、古代語における活用語の連体形による連体修飾との比較と現代語における「ての」の形式との比較とを実施し、以下の2点を明らかにした。まず、古代語における「ての」は時を表す副詞節(「AてのB」)となる場合に異なる2つの時点をつなぐ働きをするという点で活用語の連体形による連体修飾とは異なる時間関係を表す場合のあることを明らかにした。次に古代語と現代語との比較から現代語の「ての」には動作性名詞と非動作性名詞とがどちらも下接するのに対して古代語の「ての」には非動作性名詞のみが下接することを指摘した。更に「ての」による連体化には下接する名詞によって「連用修飾節の連体化」と「補文の連体化」との2つのタイプがあることを示し、これに照らすと現代語の「ての」は2つのタイプを持つのに対して古代語の「ての」は「補文の連体化」のみを持つことを明らかにした。本稿は日本言語学会第156回大会において口頭発表した内容の一部に加筆し、修正を施したものである。
著者
落合 哉人 Kanato OCHIAI
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.22, pp.75-104, 2017

本稿では、これまで中心的に検討がなされてこなかった文字で書かれる「フィラー」について、LINEと実際の会話、ブログ、実況動画の4つのデータを取り上げて調査及び分析を行った。その結果、電子媒体(LINE、ブログ)における「フィラー」の出現位置として、文頭・発話頭に偏る傾向があることや、一方で「フィラー」の担う役割・機能に着目した場合、LINEでは「対人関係に関わる機能」に、ブログでは「テクスト構成に関わる機能」に、それぞれ特化することが明らかになった。また、個別の語に対する考察として電子媒体で出現数が最も多い「まあ」を取り上げ、この語の頻出の背景に役割・機能の側面で汎用的であることや、話題をまとめ、それ以上展開させない性質を持つことがあることを論じた。本稿の検討からは、文字で書かれる「フィラー」も一様ではなく、出現環境と語の性質の双方について広く分析を行う必要があることが示唆される。
著者
落合 哉人 Kanato OCHIAI
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.83-112, 2019

本稿では、LINE上の言語使用を分析する際の単位に関して議論を行った。特に、「発話の分割」に着目して観察し、「発信の単位」「役割の単位」「話題の単位」という3つの単位を抽出した。また、議論を踏まえるケーススタディとしてLINE・対人場面・ケータイメールにおける接続表現を分析し、①先行する調査同様、LINEで接続詞の出現頻度が低いこと、②ケータイメールにおける接続詞の使用傾向にLINEと類似の特徴があること、③LINE・ケータイメールで接続助詞の相対的な増加が見られること、④直後に主節が続く従属節末の接続助詞では、各媒体で接続詞の使用傾向と類似の特徴を指摘できること、⑤直後に主節が続かない節末の接続助詞では媒体ごとに異なる使用傾向があることの5点を見た。さらに、特にLINEでは対他的な接続詞の使用に制約があることを考察した。
著者
劉 玲 Ling LIU
出版者
筑波大学大学院博士課程人文社会系日本語学研究室
雑誌
筑波日本語研究 = Tsukuba Japanese linguistics (ISSN:13424793)
巻号頁・発行日
no.23, pp.223-198, 2019

本稿は2016年度中華人民共和国国家社会科学基金項目資助(一般項目/項目号16BZW062)を得たものであり、その研究成果の一部とする。