著者
木内 大佑 久永 貴之 萩原 信悟 阿部 克哉 長田 明 東 健二郎 杉原 有希 沼田 綾 久原 幸 森田 達也 小川 朝生 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.169-175, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

研究目的は緩和ケア病棟入院中の難治性せん妄患者に対する,クロルプロマジン持続皮下注射による有効性を観察することである.2013年7月〜2014年5月において2施設の緩和ケア病棟で,せん妄に対し規定量以上の抗精神病薬治療が行われているにもかかわらずDelirium Rating Scale Revised-98(DRS-R-98)≥13で,クロルプロマジン持続皮下注射で治療したすべての患者を対象とした.評価は治療開始前と48時間後と7日後に行い,DRS-R-98<12となる,もしくはDRS-R-98が低下しかつCommunication Capacity Scale(CCS)≤2であるものを有効例とした.評価対象84名中60名(71.4% 95%CI:61-80%)が有効例であった.CCSの平均値は治療前後で1.48から1.03に改善した(p<0.001).持続皮下注射の安全性についてはCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)注射部位反応でGr2以上は1名(1.2% 95%CI:0-7%)であった.難治性せん妄患者に対するクロルプロマジン持続皮下注射は,コミュニケーション能力を保ったまま,せん妄重症度を増悪させない可能性がある.
著者
下川 美穂 久永 貴之 矢吹 律子 萩原 信悟 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.553-557, 2017 (Released:2017-08-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2

当院緩和ケア病棟では,2015年1月から2017年1月の間に5例の植え込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)を有するがん終末期の患者を経験した.ICD停止について,5例中4例でせん妄や認知症により患者本人の意思決定能力がなく,1例は意思決定能力はあったが,家族が患者本人の意思確認に同意せず,5例とも家族による代理意思決定であった.ICD停止の手順は,家族と死亡の2〜21日前に話し合いを開始し,1〜5回の面談を経て同意を得たうえで,死亡の3時間〜11日前に停止した.今回の経験を通じて,ICD停止に関して①意思決定に関する医療者の経験不足,②ICDが患者に与える苦痛に関する医療者の認識不足,③話し合いにかかる心理的負担や時間的制約,④患者と家族のICDに関する知識不足,という問題点が明らかになった.がん患者のadvance care planningの一環としてこの問題に対応していく必要がある.