著者
新城 拓也 森田 達也 平井 啓 宮下 光令 佐藤 一樹 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.162-170, 2010 (Released:2010-12-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

本研究は, 主治医が終末期がん患者の死亡確認を行うことや臨終に立ち会うことが, 家族のつらさと医師の対応への改善の必要性に影響するかを明らかにすることである. 2007年, 95のホスピス・緩和ケア病棟の遺族670名を対象に質問紙調査を行った. 全体の73%の遺族が回答した. どの医師が死亡確認を行うか, 医師が臨終に立ち会ったかは家族のつらさとは関連がなかった. 一方, 死亡確認と立ち会いは, 医師の対応への改善の必要性とは有意な関連があった. しかし, 医師が「臨終に立ち会ったこと」と, 「立ち会えなかったが, その日は頻繁に部屋に来ていた」ことの間には, 医師の対応への改善の必要度に有意差はなかった. したがって, 家族は主治医の死亡確認や, 臨終の立ち会いを望んでいるが, もし死亡確認や立ち会いができなかったとしても, 心理的なつらさが強まることはなく, 臨終までに頻繁に部屋に行くことで十分な対応であると考えていることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 162-170
著者
鈴木 梢 森田 達也 田中 桂子 鄭 陽 東 有佳里 五十嵐 尚子 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.731-737, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4 5

本調査は広い概念での補完代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)の使用実態や家族の体験を知り,がん患者とのコミュニケーションに活かすことを目的とし,緩和ケア病棟の遺族への自記式質問用紙調査(J-HOPE2016)の一部として実施された.調査の結果,がん患者の54%がCAMを使用し,内容はサプリメントのほか,運動やマッサージなど多岐に渡っていた.多くはがん治療や経済面に影響のない範囲でCAMを用いていたが,一部でがん治療や経済面への影響も懸念され,医療者からCAMについて話題にする姿勢が重要と考えられた.また,CAM使用との関連要因として若年患者,遺族が高学歴であることが抽出され,さらに,CAMの使用は家族の心理面に影響を及ぼしている可能性が示唆された.CAM使用歴のある患者家族の心理面・精神面にも注意を向ける必要がある.今後,CAMの内容別,緩和ケア病棟以外で死亡した患者についても調査を進めることが求められる.
著者
古村 和恵 森田 達也 赤澤 輝和 三條 真紀子 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.142-148, 2012 (Released:2012-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

終末期がん患者はしばしば家族や医療者に対する負担感(self-perceived burden)を経験するといわれている. 負担感を和らげるためのケアが必要とされる一方で, どのようなケアが望ましいかを実証した研究はほとんどない. 本研究では, 終末期がん患者の感じている負担感の実態と, 患者の負担感を和らげるために必要なケアを調査するために, 28名のがん患者の遺族を対象に半構造化面接を行った. 内容分析の結果, 「がん患者の負担感の内容」(例: 下の世話をしてもらうのがつらい), 「がん患者が行っていた負担感に対するコーピング」(例: 家族の仕事や予定を優先するようにいう), 「家族の気持ちと対応」(例: 患者の遠慮は家族への思いやりの表れだと思った), 「患者の負担感に対して必要なケア」(例: ことさら何かを強調するのではなく, 自然な言葉がけをする)が抽出された. 収集された患者の負担感を和らげるためのケアの有用性の評価が今後の重要な課題である.
著者
坂口 幸弘 宮下 光令 森田 達也 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.203-210, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
29
被引用文献数
13 3

【目的】ホスピス・緩和ケア病棟で家族を亡くした遺族の複雑性悲嘆および抑うつ, 希死念慮の出現率と関連因子について明らかにする. 【方法】全国の緩和ケア病棟100施設を利用した遺族に対して自記式郵送質問紙調査を実施し, 438名(67.1%)からの有効回答を分析対象とした. おもな調査項目は, Inventory of Traumatic Grief (ITG), CES-D短縮版, Care Evaluation Scale (CES), Good Death Inventory (GDI)である. 【結果】複雑性悲嘆と評定された者は2.3%であった. 回答者の43.8%が臨床的に抑うつ状態にあると評定され, 11.9%に希死念慮が認められた. 重回帰分析の結果, ITGと, CESおよびGDIとの有意な関係性が示された. 【結論】緩和ケアや患者のQOLに対する遺族の評価が, 死別後の適応過程に影響を及ぼすことが示唆される.
著者
木内 大佑 久永 貴之 萩原 信悟 阿部 克哉 長田 明 東 健二郎 杉原 有希 沼田 綾 久原 幸 森田 達也 小川 朝生 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.169-175, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

研究目的は緩和ケア病棟入院中の難治性せん妄患者に対する,クロルプロマジン持続皮下注射による有効性を観察することである.2013年7月〜2014年5月において2施設の緩和ケア病棟で,せん妄に対し規定量以上の抗精神病薬治療が行われているにもかかわらずDelirium Rating Scale Revised-98(DRS-R-98)≥13で,クロルプロマジン持続皮下注射で治療したすべての患者を対象とした.評価は治療開始前と48時間後と7日後に行い,DRS-R-98<12となる,もしくはDRS-R-98が低下しかつCommunication Capacity Scale(CCS)≤2であるものを有効例とした.評価対象84名中60名(71.4% 95%CI:61-80%)が有効例であった.CCSの平均値は治療前後で1.48から1.03に改善した(p<0.001).持続皮下注射の安全性についてはCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)注射部位反応でGr2以上は1名(1.2% 95%CI:0-7%)であった.難治性せん妄患者に対するクロルプロマジン持続皮下注射は,コミュニケーション能力を保ったまま,せん妄重症度を増悪させない可能性がある.
著者
田口 菜月 升川 研人 青山 真帆 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-200, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
15

【目的】緩和ケア病棟の質改善活動の実態と遺族調査のアウトカムとの関連を明らかにする.【方法】J-HOPE4に参加した187施設にアンケート調査を実施し,質改善活動実施状況と,施設を利用した遺族の全般的満足度,ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)との関連を検討した.【結果】日本ホスピス緩和ケア協会の自施設評価共有プログラムへの参加,多職種カンファレンスの開催頻度・カンファレンス参加職種数が多い施設で全般的満足度やGDIが有意に高かった.遺族ケアを実施している施設で全般的満足度,CESが有意に高かった.遺族への電話を実施している施設でBGQが有意に低く,葬儀や通夜への参列を実施している施設でPHQ-9が有意に低かった.【結論】質改善活動を積極的に実施している施設では,緩和ケアの質が高く遺族の悲嘆や抑うつを軽減する可能性がある.
著者
中里 和弘 塩崎 麻里子 平井 啓 森田 達也 多田羅 竜平 市原 香織 佐藤 眞一 清水 恵 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.263-271, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
31

【目的】1)緩和ケア病棟における患者と家族間の思いの言語化を支える家族支援(家族へのバーバルコミュニケーション支援)の有無と評価,2)家族へのバーバルコミュニケーション支援と「患者と家族との良好な関係性」および「ケアの全般的満足度」との関連を検討した.【方法】全国の緩和ケア病棟103施設における死亡患者の遺族968名に質問紙調査を実施した.【結果】536名を分析対象とした.支援を受けた遺族の割合は内容によって差がみられたが,評価は概ね高かった.重回帰分析の結果,患者と家族との良好な関係性では,全8つの支援で有意な正の関連が認められた.ケアの全般的満足度では,4つの支援(家族から患者への言語化の具体的提案,家族の思いを患者に伝える,患者の聴覚機能保持の保証,患者の思いを推察した家族への言葉かけ)で有意な正の関連が認められた(p<0.05).【結論】家族へのバーバルコミュニケーション支援の意義が示唆された.
著者
米永 裕紀 青山 真帆 森谷 優香 五十嵐 尚子 升川 研人 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.235-243, 2018 (Released:2018-08-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

緩和ケアの質や遺族の悲嘆や抑うつの程度に地域差があるかを目的とし,2014年と2016年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスはCare Evaluation Scale(CES),ケアのアウトカムはGood Death Inventory(GDI),悲嘆はBrief Grief Questionnaire(BGQ),うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)で評価した.関東をリファレンスとし対象者背景で調整し,比較した.CESとGDIは調整後も九州・沖縄で有意に高かった(p<0.05).BGQは調整後も中部,近畿,中国,九州・沖縄地方で有意に低かった(p<0.05).PHQ-9は調整後,有意差はなかった.いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.
著者
長岡 広香 坂下 明大 濵野 淳 岸野 恵 岩田 直子 福地 智巴 志真 泰夫 木澤 義之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.789-799, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
14

緩和ケア病棟への転院に関する障壁を明らかにすることは,がん患者が望んだ場所で療養できる体制の整備を通して,quality of lifeへの寄与が期待できる.本研究では,がん終末期患者の緩和ケア病棟転院の障壁を明らかにすることを目的に,がん拠点病院424施設のソーシャルワーカー・退院調整看護師を対象に自記式質問紙調査を行った.探索的因子分析により,緩和ケア病棟への転院の障壁11因子が同定された.病状・予後に関して医師から患者に十分説明を行うこと,適切な時期に気持ちの配慮をしながら多職種で意思決定し緩和ケア病棟に紹介すること,がん拠点病院と急性期病院,緩和ケア病棟,在宅等の地域の医療機関との緩和ケア連携体制を整備すること,緩和ケア病棟への入院が必要な患者を適切に評価する仕組みを作ることは,ソーシャルワーカー・退院調整看護師から見た緩和ケア病棟転院の障壁を軽減する可能性があると考えられた.
著者
塩﨑 麻里子 三條 真紀子 吉田 沙蘭 平井 啓 宮下 光令 森田 達也 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.753-760, 2017 (Released:2017-11-28)
参考文献数
28
被引用文献数
2

【目的】本研究の目的は,がん患者の家族が,終末期における治療中止の何に,どのような理由で後悔をしているか記述的に明らかにすることである.【方法】がん患者の遺族37名を対象に,意思決定当時と現在の2時点にかけての心理的プロセスに関する半構造化面接を行った.結果は,内容分析によって整理した.【結果】約40%の遺族に何らかの後悔についての発話がみられた.後悔の内容は,8カテゴリーに分類され,決定当時の4カテゴリーから,現在は7カテゴリーに多様化した.後悔に関連する理由は43カテゴリーに分類された.後悔がない理由は,患者や家族の要因や医療者との関係といった当時の状況に関するものが多かった.後悔がある理由は,意思決定のプロセスや選択肢,心理的対処といった意思決定の仕方と医療者との関係が多かった.【結論】後悔の性質と機能的な心理的対処の関連を理解することで,遺族の後悔制御方略を提案できる可能性が示唆された.
著者
下川 美穂 久永 貴之 矢吹 律子 萩原 信悟 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.553-557, 2017 (Released:2017-08-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2

当院緩和ケア病棟では,2015年1月から2017年1月の間に5例の植え込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)を有するがん終末期の患者を経験した.ICD停止について,5例中4例でせん妄や認知症により患者本人の意思決定能力がなく,1例は意思決定能力はあったが,家族が患者本人の意思確認に同意せず,5例とも家族による代理意思決定であった.ICD停止の手順は,家族と死亡の2〜21日前に話し合いを開始し,1〜5回の面談を経て同意を得たうえで,死亡の3時間〜11日前に停止した.今回の経験を通じて,ICD停止に関して①意思決定に関する医療者の経験不足,②ICDが患者に与える苦痛に関する医療者の認識不足,③話し合いにかかる心理的負担や時間的制約,④患者と家族のICDに関する知識不足,という問題点が明らかになった.がん患者のadvance care planningの一環としてこの問題に対応していく必要がある.