著者
江浜 律子 島田 有紀 仲西 城太郎 萩原 基文 岩渕 徳郎
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.16-23, 2018-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
21

一般に健康な毛髪を育むには頭皮の健康が重要であると考えられているが,これまでに頭皮状態が毛髪物性に及ぼす影響を遺伝子レベルで検証した報告はない。本研究では,日本人女性101名の頭皮状態を観察し,頭皮トラブルの程度が高い被験者ほど皮脂量が多く,また毛髪のハリ・コシが弱いことを明らかにした。これらの結果から,皮脂由来の刺激物質が頭皮トラブルを引き起こし,それに伴い放出される炎症性因子を介して毛包細胞における毛形成を阻害するという仮説に基づき,培養実験モデルでの検証を試みた。外毛根鞘細胞に過酸化脂質を作用させると炎症性サイトカイン(IL-1,IL-8)の遺伝子発現が亢進し,器官培養毛においてこれらの炎症性サイトカインがキューティクル強度に寄与するKAP5.1の遺伝子発現を低下させた。さらに過酸化脂質等による炎症性サイトカインの遺伝子発現亢進を抑制する植物成分を見出した。以上より皮脂由来物質等に起因する頭皮トラブルに伴い炎症性因子が亢進し,毛髪形成が遺伝子レベルで阻害されて新たに作られる毛髪のハリ・コシなどが低下することが示唆され,また,それを防ぐ植物由来成分の可能性を提示した。