著者
萩澤 達彦
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の当初の目的はアメリカの強制執行制度を直接的にわが国の民事執行制度の改正に役立てることにあった。すなわち,民事執行法は平成8年に久しぶりの改正がなされたが,その後の経済情勢の変動に応じた立法的手当はなされないまま,裁判例による接ぎ木的な解釈により,新たな事情に対応していた。そこで,アメリカ合衆国の競強制執行手続きとの比較を通じて,民事執行法の新たな改正へのインセンティプを与えるような成果を出すことを目的として京急に着手した。すなわち,本研究の意義は,単なる制度の紹介にとどまらず,わが国の競売制度の将来の発展に役立つ普遍的な成果をめざして,ファイナンス的な観点からの分析に力点を置いた成果を追求していくことにあった。しかし,平成15年と平成16年に相次いで民事執行法の改正がなされた。そこで,この研究は,研究分担者が立法課題として提案していた事項の立法化を目指すものとなった。そこで,当研究はアメリカの強制執行制度の忠実なトレースよりも,当初研究分担者が主張する立法課題の提案に重心が移行した。幸いなことに,研究分担者が提案していた事項のある程度の部分が2度の民事執行法の改正に採用されるという成果を得た。