著者
葉 鎮豪
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

昨年度の研究で食品由来のケンフェロールとタマリキセチンが制御性B細胞の分化を促進することが明らかとなった。ケンフェロールとタマリキセチンの存在下、リポ多糖(LPS ; TLR4リガンド)とともに培養して得られたB細胞からmRNAを抽出し、リアルタイムPCRで解析したところ、LPSのみで誘導したB細胞と比べて、芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon Receptor : AhR)の標的遺伝子であるシトクロムP450ファミリーlal (CYPlal)とAhRリプレッサ(AhRR)の発現が低下していたことから、両成分がAhRアンタゴニスト活性をもつことが明らかとなった。また、AhR遺伝子欠損マウスおよびAhR高活性化マウス由来B細胞を用いて制御性B細胞への分化を検討したところ、AhRシグナルの欠損が制御性B細胞誘導を促進することが示された。これらの結果より、ケンフェロール/タマリキセチンはAhRアンタゴニスト活性を介して制御性B細胞の分化誘導を促進していることが示唆された。次に、生体内での制御性B細胞の分化誘導効果を検討するため、C57BL/6マウスにケンフェロールを経口投与し、脾臓および腸間膜リンパ節の制御性B細胞数をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、ケンフェロール投与マウスでは、対照群と比較してIL-10産生制御性B細胞が多く存在することが明らかとなった。さらにケンフェロール投与マウスは、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発腸炎に対して抵抗性を示し、炎症指標である好中球が放出するmyeloperoxidase (MPO)活性と組織中のIL-6量も有意に低下した。以上の結果から、食品由来ポリフェノール類が生体内で制御性B細胞の分化誘導を促進し、炎症抑制効果を示すことが明らかとなった。