著者
三宅 泰雄 金沢 照子 猿橋 勝子 葛城 幸雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.89-98, 1976-10-27 (Released:2012-12-11)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

(1)本州東北地方の日本海側における放射性降下物の冬期にあらわれる降下率の極大について,秋田の観測値を基礎にして班究をおこなった。秋田において西ないし北西風が吹き,大気の鉛直不安定度が高い場合,降水の比放射能値は他の気象条件の場合にくらべ5ないし8倍になることがわかった。従って日本海側にみられる放射性降下物量の冬の極大は,この地方に冬の降水量が多く,北西季節風が卓越し,しかも,寒冷気団が日本海上を通過する際に下層大気があたためられ,その鉛直不安定度が増撫することなどによって説明できる。(2)大阪における放射性物質降下量が他の地域にくらべて少ない原因について調べた。90Sr降下量の比は,東京と大阪が1.4である。大阪と東京の年間降水量はほぼ等しいので,両都市の90Sr降下量の差は他の気象要因によるものである、大阪では地形の影響をうけて,全降水量の72%が北ないし東北東の風に伴なうことが明らかになった。放射性ちりを運ぶ西ないし北西の風が,大阪では他の地域にくらべて少ないことが放射性物質降下量を小さくする主な原因であることが分った。
著者
三宅 泰雄 猿橋 勝子 葛城 幸雄 金沢 照子
出版者
Journal of Radiation Research Editorial Committee
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-28, 1961-06-01 (Released:2006-08-29)
参考文献数
11
被引用文献数
14

Concentration of Cs-137 and Sr-90 in the western North Pacific was determined. The content of Cs-137 ranged from 0.8 to 4.8 μμc/l while Sr-90 of 0.6 to 3.1 μμc/l was observed. These values are much higher than those obtained in the Atlantic and the eastern part of the North Pacific. The cause of higher contamination is due to the direct flowout of the fission product from the proving grounds in the tropical region of the Pacific. The reason for the lower ratio of Cs-137/Sr-90 in sea water is also discussed.
著者
葛城 幸雄
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.277-305, 1983 (Released:2007-03-09)
参考文献数
26
被引用文献数
42 56

北緯24°から45°の範囲の、日本の12地点における90Sr月間降下量の時間変化について報告する。 90Sr積算降下量は、秋田で最も高く、大阪で最も低い。核実験開始以来の東京における積算降下量は現在までに78mCi/km2に達した。 1963年に、アメリカ、ソ連が大気圏核実験を停止したのち、90Sr降下量は減少をしめしたが、1968年以後中国核実験による放射性物質の降下が顕著にあらわれている。 中国水爆実験による降下物中の89Sr/90Sr比は、数ヶ月間増加をしめしたのち、e-(λ89-λ90)tの勾配にそって減少をしめす。又原爆実験 (数 100KT級以下) による降下物では前記の勾配より早く、その影響があらわれる期間は数ヶ月乃至6ヶ月位である。 対流圏および成層圏に放出された放射性物質の滞留時間は、それぞれ30~50日および1.0~1.2年である。 日本における90Sr降下量の季節変化は、核実験の行われた季節および規模により異なることを明らかにした。 東京における90Sr降下量と北半球全体のそれとの間には良い比例関係がみられることから、東京における90Sr降下量から、それぞれの中国水爆実験による核分裂量の推定を行った。
著者
三宅 泰雄 猿橋 勝子 葛城 幸雄 金沢 照子
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.180-181, 1961-11-25 (Released:2012-12-11)

東京におけるCs-137及びSr-90の蓄積量はCs-137については,1960年7月までに69,4mC/km2,Sr-90については,同年12月までに24.8mC/km2となり,Cs-137対Sr-90の比の平均は2.9であった。両者の成層圏における平均滞留時間は,1.3乃至2.6年と計算され,また,今後,核実験が行なわれないと仮定した場合の将来の蓄積量が計算された。