- 著者
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葛飾北斎 画
- 出版者
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葛飾北斎画、浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』の仇討ちの絵本化。半紙本2巻合1冊、江戸・西村屋与八。色摺。板元は序に「永寿堂」とあることによる。絵師署名、序中「画工北斎為一」、また巻末に「画狂人 北斎戯画」とある。ただし、巻末のそれは、嵌入の痕が認められ、修訂に際しての入れ木と考えられる。序「申の春 南仙笑楚満人誌」に「今亦画工北斎為一先生、春眠を寤させんとて、一時灯下の戯墨たりしを」云々とあるが、序の干支「申」は、文政7年(1824)か。各図、「大星由良之助」から「高師直」までの名標を刻し、かつ登場人物の衣服に役柄を示す家紋をあしらい、舞台の場面場面を再現する。美人の形姿、顔の富士額(下巻2丁ウラ)、庭先の植え込み、木の幹の肌など、享和(1801-1804)頃の北斎の江戸名所風俗絵本に通ずるものがある。精細な墨線により、紅嫌いの彩色で、緑をはじめ多様の色合いをふんだんに使って、塗り潰し、没骨などの技術を駆使する。顔には、基本的に色を加えないことが、劇場舞台の臨場感を醸す。本書は、咄本の要素を取り入れた、櫻川慈悲成作、北斎画、享和2年(1802)正月西村屋与八刊『絵本忠臣蔵』2巻から絵だけを抜き出して編集し直した修訂本。(鈴木淳)(2016.2)