著者
沖野 哲也 蔵元 一崇 木村 有 田上 弘文 稲吉 厚 八木 泰志
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.13-19, 2008
被引用文献数
1

1996年から2006年に当院で行った早期胃癌に対する噴門側胃切除後の食道残胃吻合法22例(EG群)と,空腸嚢間置法14例(JPI群)を対象とし比較検討した.手術時間はEG群が有意に短く(EG群:JPI群=133分:161分),出血量,術後在院日数は両群で有意差はなかった.縫合不全,狭窄,膵炎,腸閉塞,肺炎等の術後合併症や,胸やけ,つかえ感,嘔吐,下痢,ダンピング症状等の術後愁訴,また食事摂取量,術後体重減少,術後栄養指標変動においても両群間に有意差はなかった.術後1年目の内視鏡検査では食道炎,残胃炎,狭窄,胆汁逆流において両群に有意差はなかったが,食物残渣の残存はEG群が有意に少なく(EG群:JPI群=14.3%:80.0%),JPI群の食物残渣は大部分が間置空腸嚢内に認められた.今回の検討ではEG群と比べJPI群に良好な成績は得られず,手術時間,食物残渣量の点でEG群の成績が良好であり,噴門側胃切除後の再建には簡便で従来の食道残胃吻合法が望ましいと考えられる.