著者
薛 佳 藤掛 一郎 大地 俊介
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.108-117, 2015-03

戦後造林資源が成熟期を迎え,素材生産の拡大が課題となっている。民有林での主伐は,主に所有者と事業体が相対交渉を経て立木売買をすることによって実施されている。本研究は,主伐が発生するプロセスとしての立木売買相対交渉に注目し,相対交渉の実態を明らかにすべく,主伐が活発化している宮崎県において,森林組合を含む41林業事業体に聞き取り調査を行った。調査結果の分析から次の諸点が明らかとなった。立木売買の相対交渉は,何らかの既存の人的繋がりを辿って行われていることが多かった。森林組合と民間事業体では,所有者との関係性の違いから,相対交渉の始まり方が異なっていた。また,土地・立木の所在や境界・権利関係の確認,搬出路確保の問題などで資源が成熟していても伐採不可能な場合があることが分かった。今後,このような伐採不可能資源の存在が主伐の制約要因として重要性を増す可能性があると考えられた。