著者
薬師川 穂 池田 武文 大島 一正
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第127回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.335, 2016-07-08 (Released:2016-07-19)

葉に潜り込み, 葉肉細胞を摂食する昆虫をリーフマイナーと呼ぶ。一般に昆虫が葉を摂食すると, 食べられた箇所の細胞は褐変・枯死するが, リーフマイナーが摂食した葉は緑が維持される。そこで, リーフマイナーと植物の相互関係を探るために, 潜入葉の光学顕微鏡と走査電子顕微鏡による観察及びクロロフィル蛍光を測定した。材料はクルミホソガが潜入したカシグルミの葉(恒温室内)と, 野外採取した5種の葉を用いた。光顕観察では, 葉のマイン部の切片を作製し, サフラニン‐ファストグリーンの二重染色を行った。その結果, カシグルミの葉肉細胞には顕著な活性の低下や壊死は生じていなかった。野外採取の種では, クズを除くすべてで細胞の壊死はみられなかった。いずれのマインにおいても摂食跡はマインのある組織のみであり, まわりの組織への損傷はほとんどなかった。また, クロロフィル蛍光の測定結果から, すべての葉でマイン部分の光合成活性が低下していた。以上から, マイン形成によって葉の光合成活性は低下するが, 細胞それ自体の活性は維持されているようであった。クズのマインは, マインに接する細胞壁がスベリン化していた。