著者
薬師院 はるみ
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-12, 2004-05-01
被引用文献数
2

本論は,専門職に関する基礎的研究を,司書という文脈において再検討し,司書職制度実現の阻害要因を探る試みである。司書は,専門職ではなく,準専門職であるといわれてきた。だが,準専門職の特徴,中でも,専門職化を阻むとされる要因は,司書に対しては,必ずしも該当しない。司書の専門職化を阻んでいるのは,図書館という組織に所属することでもなければ,図書館が官僚的に組織されていることでもない。問題は,図書館が自律的な官僚的組織として形成されておらず,全体機構に組み込まれた下部組織としてのみ存立している点にある。
著者
薬師院 はるみ
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.434-440, 2007-09-01

電子化の進行は,図書館長のあり方を変えることになるのだろうか。事によると,司書は不要になるのだろうか。この種の議論は,図書館界で,これまでにも何度か提出されてきた。本稿は,この現象自体に注目するものである。議論が反復された背景には,不安の存在を指摘することができるだろう。新しい情報技術が,従来のあり方や既存の価値観を覆そうとすることへの不安である。ただし,未だに司書職制度が確立しているとはいい難い状況下,司書の新たな役割だけを追求しようとすることは,往々にして司書不要論に結びつく。そこで,本稿では,変化が激しい今日こそ,司書固有の存在意義という視点から情報化という事態を考え直すことを提案する。
著者
薬師院 はるみ
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-12, 2004-05-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
2

本論は,専門職に関する基礎的研究を,司書という文脈において再検討し,司書職制度実現の阻害要因を探る試みである。司書は,専門職ではなく,準専門職であるといわれてきた。だが,準専門職の特徴,中でも,専門職化を阻むとされる要因は,司書に対しては,必ずしも該当しない。司書の専門職化を阻んでいるのは,図書館という組織に所属することでもなければ,図書館が官僚的に組織されていることでもない。問題は,図書館が自律的な官僚的組織として形成されておらず,全体機構に組み込まれた下部組織としてのみ存立している点にある。
著者
薬師院 はるみ
出版者
京都大学
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.253-264, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
薬師院 はるみ
出版者
京都大学
雑誌
京都大学生涯教育学・図書館情報学研究 (ISSN:13471562)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.231-238, 2005-03-31

本稿は、2004年10月14日、「都市の発展と図書館サービス」というテーマのもと、上海図書館にて第3回国際図書館学セミナーと合同で開催された第2回国際図書館フォーラムの第4部会「図書館と都市の知識基盤」における発表を和訳したものである。この発表の目的は、図書館界における情報化傾向の影響を、非技術論的かつ非戦略的な側面から考察することにあった。すなわち、この傾向の背後で、図書館観および図書館員像が変容しつつあるということに着目したのである。具体的には、米国の作家ニコルソン・ベイカーが、図書館に対して行った一連の抗議活動を追跡するとともに、それらの活動が引き起こした論争についての再検討を行い、この作業を通じて、情報化時代において図書館の世界にもたらされつつある変化についての考察を行った。その結果、図書館でコンピュータ化が進められたことは、図書館専門職と旧来の図書館愛好家との間に、一種の認識論的な次元での断絶を生み出したことが明らかになった。加えて、この断絶は、旧来の図書館および図書館員の価値評価問題を内包しており、それがベイカー論争の基底をなす係争点であるという事実もまた、合わせて解明された。