著者
椎名 美穂子 藤井 克哉
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.33-44, 2022-06-30

本研究の目的は,教員養成系大学の数学教育において,既有の統計知識の活用を促進するための具体的な方策を検討することである.まず,日本学術会議の提言や先行研究から,社会的要請と学生の実態との乖離を把握し,その上で,教員養成系大学において統計を体験的に学ぶ必要性を示した.そして,事前調査を基に教材を選び,個別最適な学びを目指して「達成度自由型(ゴールフリー)の活動を」を設定した.その結果,解析に必要な問いやアイディアの出現,代表値の積極的な活用傾向が見えた.また,抽出学生からは授業外での探求,批判的な考察,教育的価値の実感の様子が見えた.その一方で,解析に必要な変数の吟味,個々の統計知識の偏り,正規分布や検定の活用を促すことへの課題が見えた.