著者
森岡 周
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、まず健常者の道具操作および観察・イメージ時の運動関連領域の脳活動をNIRS-EEGシステムを用いて検出し、それから得た脳活動を基に閾値を設定し、その閾値を超えると視覚フィードバックを与えるニューロフィードバック装置を開発した。なお全ての対象者において左運動前野の活動が明確であったため、その領域の活動に焦点を置いた。この装置を用いて、脳卒中後に上肢運動障害を呈した10名の患者に対して2週間の介入を行った。結果、道具操作観察・イメージ時に左運動前野の閾値を超える活動を認めた6名は、介入によって有意な機能改善を認めた。一方、閾値を超えなかった4名は介入によって著明な効果が見られなかった。
著者
永澤 健 白石 聖
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

食後の短時間のストレッチングが血糖値を降下させるかどうか調べるとともに,血管拡張と動脈弾性指標(CAVI)に及ぼすストレッチングの急性効果を検討した.その結果,短時間のストレッチング,は血糖値を降下させる急性の作用があることが示唆され,さらに,吐き気と疲労感を伴うことなく,酸化ストレスの上昇もなく実施できたことから,食後の血糖値管理のための有効な運動療法になり得るものと考えられた.一過性のストレッチングは伸長した体肢の血管拡張を引き起こす作用があることが示された一方,動脈弾性指標の改善は認められなかった.
著者
金内 雅夫
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

メタボリックシンドロームは糖尿病や心血管病など生活習慣病の根幹をなす重要な病態である。過度の肥満者では食事由来の燃焼CO2排出増加と1回換気量の増大が見込まれることから、メタボリックシンドロームが身近なところでCO2排出や地球温暖化と連関している可能性が窺われる。しかし、メタボリックシンドローム者のCO2排出とエネルギー代謝について論及した研究は少ない。本研究では、職域健診受診者を対象にメタボリックアナライザーを用いて酸素摂取量・基礎代謝量を測定し、推定CO2排出量を算出した。日常活動量を加算して年間CO2排泄量を推定すると、非メタボ群に対しメタボ群では有意に過剰であり、身近な温暖化対策としてのガソリン約12lの節減に相当することが判った。推定CO2排泄量を加味したエネルギー代謝の評価は、肥満対策を目指した保健指導に役立つと考えられる。
著者
小西 洋太郎
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-16, 2020-06-30

キヌア(Chenopodium quinoa Willd.)は7000年前から中央アンデス地方で栽培化された擬穀物である。気温,水,塩のストレスに耐性を示す種々な品種が存在する。キヌア種子はタンパク質含量が高く,かつ優れたアミノ酸組成を有し,またカルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛などのミネラルも多い。さらに生活習慣病を防ぐ種々のフィットケミカルが含まれる。このようにキヌアは世界の食料安全保障に貢献する作物として注目されている。しかし,キヌアの開発にあたっては,生産の場において持続可能な農業生態系,生物の多様性を維持しながら進めていくことが重要である。
著者
永澤 健
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

下肢の筋群のみを対象にした座位姿勢の静的ストレッチングを食後に実施し,血糖値低下作用がみられるかどうか検討した.健常成人女性11名を対象とし,被験者は安静条件とストレッチング条件の2つの実験に参加した.各実験条件において,血糖値,血圧,疲労感および吐き気のVAS(Visual Analog Scale)を安静時,食後15分,30分,45分,60分,90分,120分の時点で測定した.ストレッチング条件では,試験食(エネルギー692 kcal,糖質78 g)を摂取した30分後に,椅座位での下肢の静的ストレッチングを5種目,計10分間行った. 安静条件の血糖値は,食後45分後に最も高値を示した後,時間の経過に伴い低下した.ストレッチング条件では,食後30分目の血糖値が最も高値を示し,ストレッチングの実施後に血糖値が低下した.ストレッチング条件の食後45分目の血糖値は,安静条件よりも有意に低値を示した(p<0.05).ストレッチング条件の血糖値は,食後30分目と比較して食後45分目以降に有意な低値を示した(p<0.01).一方,安静条件の血糖値は,食後30分目と比較して食後90分目以降に有意に低値を示した(p<0.05).疲労感,吐き気および腹痛のVASは,両条件ともに時間経過に伴う有意な変化を認めなかった.血圧についても同様に有意な変化を認めなかった.以上のことから,食後に行う短時間の座位の下肢の静的ストレッチングには,食後の血糖値を低下させる作用があることが示された.座位の下肢ストレッチは,食後に手軽に行うことができる運動であり,身体への負担が少ないため,食後の血糖値管理に活用できるものと考えられた.
著者
椎名 美穂子 藤井 克哉
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.33-44, 2022-06-30

本研究の目的は,教員養成系大学の数学教育において,既有の統計知識の活用を促進するための具体的な方策を検討することである.まず,日本学術会議の提言や先行研究から,社会的要請と学生の実態との乖離を把握し,その上で,教員養成系大学において統計を体験的に学ぶ必要性を示した.そして,事前調査を基に教材を選び,個別最適な学びを目指して「達成度自由型(ゴールフリー)の活動を」を設定した.その結果,解析に必要な問いやアイディアの出現,代表値の積極的な活用傾向が見えた.また,抽出学生からは授業外での探求,批判的な考察,教育的価値の実感の様子が見えた.その一方で,解析に必要な変数の吟味,個々の統計知識の偏り,正規分布や検定の活用を促すことへの課題が見えた.
著者
関口 洋平
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.45-58, 2022-06-30

本報告は、畿央大学教育学部における初年次教育の実践について、その政策的背景を整理したうえで、2021年度前期の初年次教育の具体的な内容と展開について検討し、畿央大学教育学部において初年次教育がもつ意義と課題について明らかにすることを目的とする。初年次学生を対象とするアンケート調査の検討を通じて、初年次学生はベーシックセミナーにおいて論理的な文章に関する知識やスキルについて課題を通じて実践的に学ぶとともに、キャリア形成セミナーでは将来的な進路を考えるうえで視野を広げ、職業観について一定程度の知識や多様な見方を獲得した学生が多く存在することが示された。
著者
深田 將揮
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.23-29, 2019-06

畿央大学では、2014年度から1回生を対象とした教養英語授業でWEB上に日々の語学学習の記録を残す、eポートフォリオの取り組みを行っている。学習の振り返りや課外でのさらなる学びに繋がっている。しかし、授業を進めているうちに教室内外で学んだ内容や表現が実際の会話等に活かされるのは限られ、さらに英語学習のモチベーションを高め、英語学習を発展的に進め、さらに英語力を上げる契機になりにくいという課題が見えた。そこで、学んだ知識を実践的に使う機会を与えることで、学ぶ意欲を高め、さらには、英語力をさらに伸長する方法を模索するためオンライン英会話のEZ to Talkを導入した。その結果、事前事後のスピーキングテストにおいて一定の効果がみられ、また、事後のアンケート調査においても肯定的な意見が出た。
著者
森嶋 道子 林 有学 上平 悦子
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.35-42, 2019-12-31

本研究の目的は、役職を持たない看護師のワーク・エンゲイジメント(Work Engagement、以下WE)を明らかにすることである。役職を持たない看護師550名を対象に自記式質問紙を用いて調査を行った結果、今の職場・診療科が自分に合っていると感じている者、今後の方向性が明確な者のWEが高いことが明らかとなった。また、臨床経験5年未満の者のWEは、臨床経験20年以上の者のWEと比較して低いことが明らかとなった。このことから、役職を持たない看護師には、職場の適応感を重視した配属を検討することや、今後の方向性を明確にできるような支援が必要であり、経験の浅い役職を持たない看護師には、支援を充実する必要性が示唆された。
著者
中西 恵理 林 有学 須藤 聖子 小林 智子
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.51-58, 2019-12-31

基礎看護学領域において、学生がより主体的に自己学修にとりくむことや、臨地実習に対する自己効力感を高めることを目的として実施している「基礎看護技術自己学修会」への参加が、学生の臨地実習自己効力感にどのような影響を与えているのか検証した。結果から、基礎看護技術自己学修会に参加した学生の臨地実習自己効力感は、参加していない学生の臨地実習自己効力感より高い傾向にあることが示唆された。基礎看護技術自己学修会に参加することで、既修の基礎看護技術の習得状況に対する学生の自己評価を促し、技術練習することによって、臨地実習で基礎看護技術を実践することに対する学生の自信につながる可能性がある。
著者
中村 恵 小柳 和喜雄 古川 惠美
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.19-34, 2019-12-31

本研究の目的は、日本の接続期教育における就学前教育についての在り方を検討することである。そこで、Growth as a human being and member of society をwell-beingとして育むフィンランドの幼児教育システムと、その特徴でもあるesikoulu(エシコウル:プレスクール)における調査により、就学前教育における「個」への尊重が、その内にある「well-being」への意識に教師が敏感であることにつながり、子どもの学習者としての「agency」が発揮されやすく、学習環境として成熟した「co-agency」が生成されやすいことが明らかになった。
著者
深田 將揮
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulltin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.23-29, 2019-06-30

畿央大学では、2014年度から1回生を対象とした教養英語授業でWEB上に日々の語学学習の記録を残す、eポートフォリオの取り組みを行っている。学習の振り返りや課外でのさらなる学びに繋がっている。しかし、授業を進めているうちに教室内外で学んだ内容や表現が実際の会話等に活かされるのは限られ、さらに英語学習のモチベーションを高め、英語学習を発展的に進め、さらに英語力を上げる契機になりにくいという課題が見えた。そこで、学んだ知識を実践的に使う機会を与えることで、学ぶ意欲を高め、さらには、英語力をさらに伸長する方法を模索するためオンライン英会話のEZ to Talkを導入した。その結果、事前事後のスピーキングテストにおいて一定の効果がみられ、また、事後のアンケート調査においても肯定的な意見が出た。
著者
前岡 浩
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は不快感や不安感といった痛みの情動的側面について、特に非特異的慢性腰痛者を対象に脳機能および自律神経機能の側面から明らかにし,さらに,痛みの情動的側面に対する有効な治療手段についても検討することである.平成29年度は,まず平成28年度に実施した痛みの情動的側面に対する有効な治療手段についてさらに詳細に検証した.内容は,情動喚起画像を使用し,受動的に画像内の痛みの部位が消去されるのを観察する条件と被験者自らが積極的に画像内の痛みの部位を消去する条件を比較した.その際,心拍変動を測定することで自律神経系の変化も評価した.その結果,痛み閾値と耐性の増加,強度と不快感の減少,さらに交感神経活動の減少も認められ,痛みの情動的側面に対する有効なアプローチとして可能性を示すことができた.次に,非特異的腰痛者に対する経頭蓋直流電気刺激の痛みの情動的側面における有効性と鎮痛効果について検証した.腰痛を有する50名を無作為に5群に割り付け,左右一次運動野,左右背外側前頭前野への陽極刺激および左背外側前頭前野へのsham刺激の5条件を設定した.評価項目は圧痛の閾値と耐性,腰痛における日常生活の影響,破局的思考,特性および状態不安,痛みの強度および質,不快感の強度とした.その結果,圧痛閾値では左背外側前頭前野への刺激によりsham群と比較して有意な増加が認められた.刺激1週間後における破局的思考では,右一次運動野への刺激により左背外側前頭前野と比較し有意に減少した.腰痛の強度は,左一次運動野において,刺激直後と比較して24時間後に有意な減少を認めた.今回の結果から,有効な刺激部位の特定には至っていないが,一次運動野は痛みの感覚的側面,背外側前頭前野が痛みの感覚的側面および情動的側面の鎮痛に関与している可能性が示唆された.
著者
安井 義和
出版者
畿央大学
雑誌
畿央大学紀要 = Bulletin of Kio University (ISSN:13495534)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.65-72, 2017-12

0(零)は実数の加法演算で単位元という重要な存在でありながら小・中・高等学校ではその定義を論理的に学ぶことが極めて少ない。小学校1年生では1、2、3、・・・、9の並びに10を学ぶ。ここで初めて0 を学ぶが、学び方としては10でなくとも、9の次は極言すれば*でも、♯でもいい。そこで本学の「算数学」なる開講科目で数学的な演算からの観点で自然数から0を論理的に構成し、続いて負の整数を構成する。最後には -(-1)=1、3-(-1)=4などが成り立つことを示した授業実践例である。これら2つの式に4つの「-」が あるが、2つ目の式「3-(-1)=4」における「3」の直後の「-」は演算記号で、他の3つの「-」は正負の負の記号である。従って、「3-(-1)=4」を理解する際に「-(-1)=1」を用いて「3-(-1)=3+1」とするのは論理的ではない。本報告では論理的構成の理解をサポートするためにトランプカードを使用してゲーム的に理解することが特徴的である。
著者
神戸 美輪子 星 和美 細田 泰子
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は潜在看護師の復職教育プログラムを構築することである。調査(1)~(3)の結果から、復職研修は潜在看護師同士の交流を持てるようなプログラムとし、救命救急処置や安全の技術、観察とアセスメント能力を養えるような内容を扱うことが必要であると考えられた。構築した復職研修を評価するために、潜在看護師を対象として一般的な研修受講群(コントロール群)と教育プログラム受講群(実験群)の2群に分け、復職の意欲や自信、不安について比較検討を行ったところ、構築したプログラムの有効性が示唆された。