著者
大西 玲子 藤井 弘二 津田 博子 今井 克己
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.746-751, 2012 (Released:2013-07-24)
参考文献数
19

目的:栄養評価に必須である体重測定において,寝たきりの要介護高齢者では,ベッド式体重計や吊り下げ式体重計等特別な装置が必要となる.また在宅の高齢者では体重の計測そのものが困難であることが多い.そこで,身体計測値から体重推定式の算出を試みた.方法:対象者は要介護病棟・長期療養病棟に入院している患者のうち,同意を得られた74歳以上の要介護度4~5の165名(男性33名,女性132名)である.身体計測項目は,身長,体重,上腕周囲長,上腕三頭筋皮下脂肪厚,肩甲骨下部皮下脂肪厚,下腿周囲長,腹囲とした.結果:体重と各身体計測値および年齢との相関関係を検討したところ,男性では腹囲(r=0.891,p<0.0001),年齢(r=0.779,p<0.0001),下腿周囲長(r=0.614,p<0.0001)の順に,女性では腹囲(0.806,p<0.0001),上腕三頭筋皮下脂肪厚(r=0.723,p<0.0001),上腕周囲長(r=0.662,p<0.0001)の順に体重と強く相関することが分かった.重回帰分析により求めた体重推定式は男性では体重=0.660×腹囲(cm)+0.702×下腿周囲長(cm)+0.096×年齢(歳)-26.917(R2=0.862,p<0.001),女性では体重=0.315×腹囲(cm)+0.684×上腕周囲長(cm)+0.183×身長(cm)-28.788(R2=0.836,p<0.001)となった.結論:男性では体重の約86%,女性では約84%を説明できる推定精度の高い推定式が作成できた.男女ともに腹囲が独立変数として選択されたことから,内臓脂肪蓄積の指標として使用されている腹囲は,寝たきり要介護高齢者の体重を推定するうえで有効な身体計測項目と考えられた.