著者
藤井 弘毅 山川 政明 澤田 嘉昭 牧野 司
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.27-36, 2002-04-15
被引用文献数
2

シロクローバ混播,年間5-6回の多回刈り処理を加えた条件下で,チモシーおよびメドウフェスクの乾物収量,草種構成割合の季節的推移を調査した。また,その草種間差異と単播条件下における草種の刈取り時の生育段階,分げつ数,平均1茎重,畦幅(株の広がり),草丈伸長速度,乾物重増加速度(CGR),および基底部の乾物重(刈株重),非構造性炭水化物(NSC)および窒素の含有率および含有量の推移との関連性を検討した。なお,用いた品種はチモシー「ホクシュウ」,メドウフェスク「トモサカエ」,シロクローバ「ラモーナ」であった。また単播区では手取り除草を実施した。その結果,単播条件下では4年目まで欠株は発生せず,刈取り時の1m^2当たりの総分げつ数も2,000本前後の値を下回ることはなかった。一方混播条件下では,単播条件下に比較して,メドウフェスク区よりもチモシー区において,チモシーの乾物収量の減少割合が大きく,とくに3年目の7月(本研究では4番草)以降,その傾向が顕著になった。このことは,混播条件下では,チモシーおよびメドウフェスクの草丈のような上方向への伸長生長よりも,被度が著しく低下したことに起因していた。この被度低下の車種間差異は,刈取りの影響によるよりも,主としてシロクローバに対する競争力の差異を反映したものと考えられた。シロクローバ混播条件下におけるチモシーおよびメドウフェスクの乾物収量および構成割合の季節的推移にみられた草種間差異は,株の広がり,草丈伸長速度,CGR,刈株重,NSC並びに窒素の含有率や含有量よりも,分げつの再生の態勢の草種間差異との関連性が高いことが示唆された。すなわち,4番草(7-8月に生育した)の再生に影響を及ぼしたと思われる3番草(6-7月に生育した)の刈取り時の節間伸長茎率は,チモシーの方がメドフェスクよりも高い値を示し,一方では,刈取り後,再生可能な栄養生長茎の数はチモシーの方が少なく,その1茎重もメドウフェスクに比較して小さいことから,刈取り後は再生力が劣り,シロクローバに対する競争力が劣ったと考えられた。このことから,当該時期における分げつ数の確保が,その後の生産量を決定する要因の一つとして重要であることが示唆された。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 藤井 弘毅 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.52-54, 2004-04-15

チモシー種子収量性の効率的改良に供するための簡易検定法の開発を試みた。チモシーの種子収量は1穂種子重,さらには穂1cmあたり種子重(種子密度)と密接に関連しているため,少数の穂から実際に採種を行い,その1穂種子重や種子密度を調査する方法が簡易検定法として適当と考えた。この考えに基づき,圃場の株から引き抜かれた節間伸長茎を以後温室内で水栽培する方法の有効性について検討した。2002年5月に圃場から引き抜かれた節間伸長茎を温室内で採種時まで水栽培した結果,それらの1穂種子重と種子密度は,特に2000年の圃場試験の結果とよく一致したため,この方法はチモシー種子収量性の簡易検定法として有効であるとの結論に達した。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 藤井 弘毅 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-51, 2004-04-15
被引用文献数
1

牧草の種子収量性は茎葉の収量性ほど考慮されないが,牧草品種の商業的な成功には種子収量性も重要な要素である。チモシー種子収量性の年次変動と狭義の遺伝率を調べるため,栄養系とその後代系統を採種試験に供試した。その結果,チモシーの種子収量性には(1)試験年次など,環境が変わることにより序列が大きく変化しうること,および(2)同一環境条件下で評価・推定される狭義の遺伝率が高いこと,という2つの特徴があり,したがってその効果的な改良のためには,1回の検定を基に選抜を行う場合は複数回の選抜が必要となり,また1回の個体選抜しか行わない場合は複数の環境条件下における検定が求められる,との結論に達した。