著者
藤井 盛澄
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.147-159, 1976 (Released:2007-10-19)
参考文献数
21

1958年12月には,亜熱帯ジェット流は,始め北アメリカで,次いで月末には,西ヨーロッパで大規模に中高緯度へ侵入した。この大規模変位と,それに関連した熱帯ジェットの振舞いが,大気大循環との関係に留意して述べられる。大規模変位をもたらすきっかけは,ヨーロッパと北アメリカとで異なるが,何れの場合も,中高緯度大気が低緯度大気に及ぼす作用が重要である。中緯度へ侵入した亜熱帯ジェットの尾根の前面では寒気が大規模に流出し,変位した部分はここで切断される。切断されて中緯度に残された部分は,侵入した亜熱帯高気圧の衰退と共に消失する。亜熱帯ジェットの大規模変位により,中高緯度大気と低緯度大気との間で大規模な相互干渉が行われ,特に,中高緯度の大気大循環は大きい影響を受ける。キューバ附近,日本附近及びアフリカ北部では,通常の位置にある亜熱帯ジェットの低緯度側に,冬季,時として別の強風核が観測されるが,これは比較暖い海面上で,低緯度深く達する強い寒気流出と関係がある。