著者
藤原 一枝
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, 2017-12-10

東京大学脳神経外科に1949年から1963年までに入院した,15歳未満の頭部外傷患者362例を検討した中村紀夫先生(東京慈恵会医科大学脳神経外科名誉教授)は,1965年に「小児の頭部外傷と頭蓋内血腫の特徴」について『脳と神経』誌に報告した7,8).症例を検証する中で,受傷時の外力エネルギーが小さい,程度の軽い衝撃でありながら,bridging veinが破綻し,重篤な急性硬膜下血腫を生じさせている小児特有の病態があること,網膜出血は合併する重要な所見であることなどを指摘している.外傷の程度は,よちよち歩きでの転倒やベッドからの転落などの例が挙げられ,「日常生活にちょいちょい起こるような偶発事故」,「打撲部位は後頭部が多い」とある.この病態は,のちに小児の急性頭蓋内血腫の第Ⅰ型として報告され9),「中村(の)Ⅰ型」として知られるようになった. 軽微な頭部打撲による乳幼児の急性硬膜下血腫は,CTが普及し始めた1980年代以降,発見が早ければ救命率も予後も大きく改善した.私も35年以上フォローしている3例を経験している.
著者
早川 勲 土田 富穂 竹村 信彦 藤原 一枝 青柳 訓夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.182-190, 1983-05-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
23

外水頭症は脳室外閉塞性水頭症, 硬膜下水腫, 硬膜下液貯留等と同一の疾患単位として扱われているが, 厳密には交通性水頭症の初期もしくは軽症状態といえよう. 著者らはCTで確認し得た頭蓋内・脳外低吸収域を有する48症例中, 頭囲拡大を示す28例につき検討した. 初診年齢は87%が1歳未満, 性比は2: 1で男児に優位だった. 臨床的には中枢神経症状を欠くものが最も多 い (35.7%) が, 運動発達遅延 (25%) や精神発達遅延 (17.9%) もみられた.CT上軽度脳室拡大と判定されるものが少なくないが, cerebroventricular indexによれば脳室拡大はむしろ少ない.RIもしくはMetrizamideによる脳槽撮影では髄液循環遅延を示唆した. 髄液圧は恒常的高圧を示さず, 持続終夜圧モニターでのみ間歇的高圧期がみとめられ, 成人のNPH様パターンを示した.予後は良好で初診後9ヵ月前後でCT上改善をみた. 内水頭症への移行は1例でのみうかがえた. 診断, 治療方針につき述べた.