著者
藤原 兌子
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

骨髄抑制剤(MS:5-FU+CP)+G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)併用療法による梗塞後心機能改善効果とメカニズムの検討を以下の4群のウサギで検討した。(1)骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群:梗塞後1、2日目にMSを静注、梗塞後3日目より5日間G-CSFを皮下注射、(2)G-CSF単独療法群:梗塞後1、2日目に生理食塩水を静注、3日目より5日間G-CSFを皮下注射、(3)MS単独療法群;梗塞後1、2日目にMSを静注、3日目より5日間生理食塩水を投与、(4)非治療梗塞群:梗塞後7日間生理食塩水を投与。結果および考察A)梗塞前および28日後左室駆出率・左室壁厚・左室径は、骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群で、改善が最も良好であった。B)CD^<34>陽性単核球は骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群およびG-CSF単独療法群で高度に増加した。C)共焦点レーザー顕微鏡では、骨髄由来(赤色の蛍光色素DiI陽性)の心筋細胞は骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群でもっとも多かった。しかし、その頻度は骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群でも1-2%程度で、心機能改善効果を説明するには少なすぎた。D)梗塞7日目に摘出した心筋組織のVEGFおよびMMP-1のウエスターンブロット解析では骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群がもっとも多かった。E)梗塞28日目に摘出したモデルウサギ心では左室重量および心筋細胞のサイズに4群間で差がなかった。しかし、陳旧性梗塞領域は非治療梗塞群で最大で、骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群で最小であった。また、CD31陽性毛細血管およびα-平滑筋アクチン陽性筋線維芽細胞数は骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群で最も多かった。以上より、骨髄抑制剤+G-CSF併用療法群での高度の心機能改善効果の成因は骨髄由来の心筋細胞再生よりはMMP等のサイトカインの関与が重要と思われる。