著者
藤原 慎太郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.293-303, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究では、自動車ディーラーで働いていた吃音症状がある男性に対してアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)を実施した効果について検討した。実施した介入は、吃音の回数を減らすことを目標とするのではなく、ACTの構成要素である価値に沿った行動活性化を中心に生活の質(QOL)を改善することを目標とした。対象者のQOLの評価のため、対象者が好んでいた余暇活動など対象者の価値に基づいた行動が生起した回数を記録した。結果的に、介入前はほとんど見られなかった余暇活動が増加し、また直接の介入対象ではなかったものの主観的な吃音の回数も減少し、これらの効果は3カ月後のフォローアップまで維持されていた。本研究では吃音者のQOL改善にACTが有用で、また介入の直接の目標ではないが吃音の減少に役立つ可能性が示された。