著者
藤原 敬記 伊藤 敏彦 荒木 健治 甲斐 充彦 小西 達裕 伊東 幸宏
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.1493-1503, 2006-07-01
参考文献数
24
被引用文献数
9

実環境での音声対話システムの使用において,誤認識を回避することは難しい.誤認識が起きると,システムはユーザの期待する応答とかけ離れた応答を行い,対話がスムーズに進まなくなることも多い.そこで本研究では,音声認識器が誤認識した場合でも,認識信頼度と対話履歴を用いることで正しくユーザの意図を推定することができる音声言語理解手法を提案する.これは,音声認識器が誤認識した場合でも多くの場合,複数候補(N-best)中に正解が含まれていること,システムが誤認識した場合にはユーザは大体訂正反応を示すこと,タスク指向対話には強い一貫性がありユーザは基本的に意味的・文脈的に関係した内容以外を発話しないことを利用する.また,提案手法ではあらかじめすべての認識可能単語を理解候補として保持し,言語理解部の対話戦略において音声認識結果中の単語との意味的関連性などを考慮している.これにより音声認識結果のN-best中に正解の一部が含まれていない場合でも,複数のユーザ発話の認識結果に基づくことで正しい意図を推定することが可能となっている.評価データにおいて,提案手法における対話単位での理解率は72.2%(21,430/29,670対話),単語単位での理解率は87.1%(77,544/89,010単語)であり,従来手法の最新認識結果の上位候補を優先するシステムの57.9% (17,178/29,670対話),75.4%(67,084/89,010単語)と比較しても有効である.