著者
小野瀬 直美 藤原 顯
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.17-17, 2003

低密度の小惑星上における衝突によるレゴリス形成過程を考えるために、空隙率が63%の石膏ターゲットに直径7mmのナイロン球を4.3km/secで衝突させ、高速度カメラを用いて破片速度を測定した。速度が測定されたのは0.02g以上の全ての破片、および0.0003g以上の破片のうちの約半数である。また、本実験において測定可能な破片速度は0.1から200m/sであり、小惑星上のレゴリス形成を論じる上で必要かつ十分である。各破片がターゲット表面を離れた時刻が破片の軌跡から求められた。この放出時刻をもとに、全破片は早期放出破片群と後期放出破片群(以降早期群、後期群と呼ぶ)の2つのグループに分けることができる。早期群の破片のうち大きなものはSpall破片であることが回収破片との対照から確認された。また、その速度-質量分布はNakamura and Fujiwara (1991) で示された衝突破壊における表面破片の速度質量分布と似た分布を示す(図.1)。一方で、後期群は速度-質量分布のグラフのうち、遅くて小さい領域に集中する。これらの破片群は、ターゲット表面とほぼ垂直に、クレーターのボウル部分から放出されており、その数は観測した全破片のうちの9割に上る。この遅くて小さな後期群はクレーター形成でのみ見られるもので、クレーターの底が抜けてしまう完全破壊時には見られない。画面上で得られた破片面積から求めた破片の質量分布を0度の衝突に関して足し合わせたものを図.2に示す。早期群と後期群は-0.3および-1.6という、異なったべき係数を持つ。衝突クレーター形成時の破片質量分布に見られる『折れ曲がり点』は、これらの破片群の重なり合いで説明できる。