著者
藤川 裕司 片山 知史 安木 茂
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-11, 2014-03-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

宍道湖のワカサギは1994年漁期に激減し,その後不漁が継続している。今後,資源の増大策を検討する必要があるが,そのためには生活史を通した生息場所と回遊パターンを明らかにしておくことが基本的に重要な課題である。耳石のストロンチウム,カルシウム比の分析結果,ます網調査およびひき網調査結果から回遊パターンを調べた。その結果,主たる産卵場である宍道湖流入河川の斐伊川で孵化したワカサギは速やかに流下し,5 ~ 8 月を中心に大部分が中海かあるいは海へ降下し,産卵期の 1 ~ 2 月になると産卵のために宍道湖へ遡上するものと考えられる。その降海前の生息場としては,流入河川が重要であると推測された。以前の豊漁時代に資源の主体であった湖内残留群は,現在は低位水準にあると考えられる。