著者
松川 康夫 張 成年 片山 知史 神尾 光一郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-143, 2008 (Released:2008-03-23)
参考文献数
60
被引用文献数
39 37

我が国のアサリ Ruditapes phillipinarum の総漁獲量は,1960 年には 10 万トンであった。その後,一部に漁場の埋め立てによる減少があったにも関わらず,1982 年には 14 万トンまで増加したが,1984 年から激減して,1994 年にはわずか 3 分の 1 程度(5 万トン)になり,その後もこの水準が続いている。著者らはアサリの生態や資源に関する報告を総括し,1984 年以降のアサリ漁獲量の激減の主要因を過剰な漁業活動,すなわち親貝と種貝用の稚貝に対する過剰漁獲と結論づけた。それ以外にも,周年の過剰操業による底質擾乱は,稚貝の生残率低下を助長した可能性が高いと考えられる。
著者
片山 知史 秋山 清二 下村 友季子 黒木 洋明
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.688-693, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

東京湾において漁獲したクロアナゴ 189 個体とダイナンアナゴ 448 個体について,耳石横断切片法によって年齢を査定した結果,クロアナゴの年齢は 1+から 6+の範囲であり,2+から 4+までの年齢群が優占していた。ダイナンアナゴは,0+から 11+の範囲であり,特に 5+から 8+の個体が主体を成していた。ダイナンアナゴは,6+以上の全長 1000 mm を超える個体も多く,マアナゴと比べても大きく成長する魚種であると考えられた。両種の雄の割合は,2-6% であり,性比が雌に著しく偏っていた。
著者
山本 昌幸 棚田 教生 元谷 剛 小林 靖尚 片山 知史
出版者
一般社団法人 水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:09161562)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.178-186, 2020-08-25 (Released:2022-03-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1

瀬戸内海東部のアイゴの資源生態を明らかにするため,2013年4–12月に岡山県,香川県,徳島県で漁獲された本種の年齢・成長と産卵期について調べた.標準体長は117–310 mmであった.生殖腺重量指数(GSI)は雌が0.04–40.36,雄が0.01–30.16となった.組織切片観察から,雌雄それぞれGSIが3.57と4.79以上の個体が成熟し,7月下旬に退行期の雌が観察された.GSIが3.57以上の雌と4.79以上の雄は,それぞれ6–8月と6–7月に出現した.さらに雌雄ともにGSIは6月中旬から7月に高くなった.耳石のチェックマークは6–8月に年1回形成された.最高年齢は雄と雌でそれぞれ4歳と8歳であった.雌雄の有意な成長差は認められなかった.成長式は,SLt=255 (1−e−0.56(t+0.95)), (SL:標準体長mm, t:年齢)となった.
著者
遠藤 友樹 加納 光樹 所 史隆 荒井 将人 片山 知史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.16-00057, (Released:2016-11-25)
参考文献数
33
被引用文献数
3 3

2014年4月から2015年3月に茨城県北浦において採集した侵略的外来種のチャネルキャットフィッシュ計937個体の耳石を解析し,本種の年齢と成長について調べた。耳石縁辺部の不透明帯は1年に1本,5-6月に形成され,この時期は産卵盛期と一致していた。von Bertalanffyの成長式は雌雄間で有意に異なり,雄が雌よりも成長速度が速い傾向が認められた。最高年齢は雄で14歳,雌で13歳と推定された。さらに,本種の個体群構造の推定や防除計画の立案に有用な年齢-体長換算表を作成した。
著者
松川 康夫 張 成年 片山 知史 神尾 光一郎 YASUO MATSUKAWA NARITOSHI CHO SATOSHI KATAYAMA KOICHIRO KAMIO (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (株)東京久栄 National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency Tokyo Kyuei Co. Ltd.
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-143, 2008-03-15
参考文献数
60
被引用文献数
8 37

我が国のアサリRuditapes phillipinarumの総漁獲量は,1960年には10万トンであった。その後,一部に漁場の埋め立てによる減少があったにも関わらず,1982年には14万トンまで増加したが,1984年から激減して,1994年にはわずか3分の1程度(5万トン)になり,その後もこの水準が続いている。著者らはアサリの生態や資源に関する報告を総括し,1984年以降のアサリ漁獲量の激減の主要因を過剰な漁業活動,すなわち親貝と種貝用の稚貝に対する過剰漁獲と結論づけた。それ以外にも,周年の過剰操業による底質擾乱は,稚貝の生残率低下を助長した可能性が高いと考えられる。The annual catch of the Manila clam Ruditapes phillipinarum in Japan increased from 100 thousand tonnes in 1960 to 140 thousand tonnes in 1982. This increase occurred despite a local decrease in coastal fishing grounds due to land reclamation and helped to balance overall production. Since 1984, however, the catch has decreased drastically to only 50 thousand tonnes and has remained at this low level. The authors reviewed published reports relevant to the ecology and resources of Manila clam and concluded that the main factor responsible for the drastic decrease in catch is over-fishing. Over-exploitation of the adults and sub-adults significantly affected and damaged reproduction and source-sink relationships among localities. Disturbance of the clam habitat throughout the year by heavy fishing gear may also be responsible for lowering the survival rate of the juveniles.
著者
飯塚 景記 片山 知史
出版者
水産総合研究センター
雑誌
水産総合研究センター研究報告 (ISSN:13469894)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-222[含 英語文要旨], 2008-12
被引用文献数
1

耳石形態に関する研究は、魚類年齢研究と共に早くから行われており、研究報告も比較的多い。それらの内容は、一魚種の耳石外形から複数魚種の耳石の外形、溝、核等の特徴を解析した研究まで様々である。しかし、耳石サイズを含めて耳石形態を体系的に整理した報告はこれまで発表されていない。筆者らは、耳石の形と大きさを分類群内、分類群間で比較を行い、さらに縦偏形、側編形等の魚体型や定着性、回遊性等の生活型との関連を検討することにより、多用な耳石形態法則性を見いだすことを目的として、日本産硬骨魚類29目、162科、550種の耳石を収集し、表面各部の観察と耳石の長さと高さの計測を行った。本稿では第1章において、耳石形態研究が国内外でどのような研究経緯で進められてきたかを簡潔に述べ、次に、耳石の外部形態について、全体の形および各部位の形状を類型化し、さらに耳石の大きさの基準を決めた。第2章では魚種毎の観察結果、計測結果を基に、魚種毎の耳石形態を分類群毎に整理して記載した。第3章では各章で得られた耳石形態の特徴を総括し、耳石形態に関する系統進化学的、生態学的、機能形態学的な検討を行い、耳石形態を規定する要因を考察した。
著者
藤川 裕司 片山 知史 安木 茂
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-11, 2014-03-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

宍道湖のワカサギは1994年漁期に激減し,その後不漁が継続している。今後,資源の増大策を検討する必要があるが,そのためには生活史を通した生息場所と回遊パターンを明らかにしておくことが基本的に重要な課題である。耳石のストロンチウム,カルシウム比の分析結果,ます網調査およびひき網調査結果から回遊パターンを調べた。その結果,主たる産卵場である宍道湖流入河川の斐伊川で孵化したワカサギは速やかに流下し,5 ~ 8 月を中心に大部分が中海かあるいは海へ降下し,産卵期の 1 ~ 2 月になると産卵のために宍道湖へ遡上するものと考えられる。その降海前の生息場としては,流入河川が重要であると推測された。以前の豊漁時代に資源の主体であった湖内残留群は,現在は低位水準にあると考えられる。
著者
一色 竜也 片山 知史
出版者
神奈川県水産技術センター
雑誌
神奈川県水産技術センター研究報告 (ISSN:18808905)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-49, 2007-03

・ヒラメ種苗の胃のpHは胃内容物の有る場合は平均5.5(5.1-6.2)、無い場合は6.3(6.0-6.5)であった。・腸管は胃内容物の有る無しで差は認められず、そのpHは平均6.3(6.0-6.5)であった。・3種類の濃度(2mg/ml、10mg/ml、20mg/ml)ともALCを内包したマイクロカプセルの作成が可能であった。・MALC餌料区及びDALC餌料区において、耳石上に標識として十分に判別可能な個体が得られた。・MALC餌料区はDALC餌料区に比べ標識率(標識として判別できる個体の割合)が少なかった。・ALC溶液は作成後、10日間は標識力を保持していた。
著者
大方 昭弘 伊藤 絹子 片山 知史 本多 仁 大森 迪夫 菅原 義雄
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

砂浜浅海域に生息するアミ類は、沿岸魚類の生活上不可欠の食物源であり、浅海域魚類群集の生産構造の中核的地位を占めている。しかし、水深3m以浅の砂質海岸の砕波帯に生息するアミ類の生物生産過程および沿岸物質循環系における機能については明らかではない。本研究は、仙台湾砂質海岸の波打ち際斜面に生活し、数量的にも多いアミ類Archeomysis kokuboiの示す物質経済の特異性を明らかにし、浅海域生物群集との機能的結合関係を見いだすことを目的に行われ、下記のような結果が得られた。1.砕波帯における水深5m以浅に出現するアミ類のほとんどはArchaeomysis属であり、特に水深3m以浅にはA. kokuboi、3m-5mにはA. grebnitzkiiが卓越し、5-15mの水域にはAcanthomysis属が多い。魚類の胃内容組成にも、このような水深によるアミ類の分布状態の違いが反映している。2.汀帯の砂質斜面に生息するA. kokuboiの高密度分布域は、潮汐とともに移動するが、汀帯下端部からの距離はほぼ一定である。アミが潜砂するこの高密度域の砂の中央粒径値は2.0-2.3の範囲にある。日中は汀帯砂中に潜砂するものが多く、夜間には汀帯の沖側、水深1-2m付近を群泳しながら鞭毛藻やCopepodaなどを摂食している。3.水温15℃、照度0-100luxの条件におけるA. kokuboiのアルテミアを食物とする日摂食率は、湿重量で24.8%、乾重量で39.7%であった。1日24時間の摂食量のうち夜間は74.9%、昼間は25.1%であった。4.摂取されたアルテミアのアミ体物質への転化効率は、15℃において他の温度条件におけるよりも大きく、体長別にみると、小型が24.6-44.2%、中型が15.4-36.4%、大型が8.9-13.8%であり、成長とともに低下する。放射性同位元素Cでラベルしたアルテミアの投与量とアミ体内残留量との比は、12時間後52%、24時間後38%であった。5. A. kokuboiは一生の間に少なくとも2回以上産卵する可能性があり、個体群としては年間6発生群以上であることが確認された。4-6月生まれの群は成熟が速く小型で産卵し、11-1月生まれの群は成長が遅く、春季に大型群となって産卵に参加する。このように、本種は周年にわたって砕波帯魚類群集の生産構造の中核種として重要な役割を果たしていることが明らかにされた。