著者
藤川 重雄
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本報告は上記研究課題について, 主として, キャビテーションクラウドを構成する気泡群の2個の気泡の力学に関する基礎的研究成果を述べたものである. まず, 非圧縮性液体中で膨張, 収縮, 並進運動する大きさの異なる2個の気泡に対し, 気泡同志の相互作用, 気泡壁の変形を考慮して運動方程式を導びいた. さらに, これを圧縮性液体の場合に拡張した. 得たる成果は以下の通りである. 1 本理論を固体境界壁近傍での単一蒸気泡崩壊問題に通用し, 結果を液体衝撃波管による実験により検証した. さらに, 境界要素法に基づく直接数値計算結果と比較て本理論の適用限界を明らかにした.2. 本理論を最初大きさの異なる2個の気泡の崩壊問題に適用した. その結果, 初期半径の小さな気泡は, 大きな気泡との相互作用により変形しつつ並進運動を行ない, 収縮, 膨張をくり返すごとにますます変形していく. このような気泡の変形は, 気泡の収縮, 膨張運動に加えて, 相互作用による並進加速度運動によって引き起こされる. また, 2個の気泡の適当な初期半径比及び気泡内気体初期圧力の下では, 同一条件下の単一気泡の場合よりも高い衝撃圧力を発生すること等を明らかにした.3. 本研究の成果を音場中における2個の球形気泡の非線形振動に応用した. 一つの気泡がm周期運動をすると. 他の気泡もm周期運動し, 2個の気泡が同時に音場の振動数の1/(m〜)倍の振動数を有するキャビテーションノイズの原因となることを明らかにした.以上の成果は, キャビテーションクラウドの力学が従来の単一気泡の力学とは全く異なったものであることを示しており, 本研究を通して初めて明らかにされてきたものである. 今後, 更に引き続き多数個の気泡の力学を研究する計画である.