著者
藤巻 裕之
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.485-499, 2017-01

冷戦期、米国とソヴィエト連邦はそれぞれ地域機構を作ることで安全保障環境を構築した。両陣営は、第三次世界大戦を未然に防ぐために政治/安全保障面と経済面において両陣営内に地域主義の「網」を張り巡らせた。 本稿の問題意識は、冷戦期における米ソ両陣営の地域主義は何を目指したのか、にある。冷戦期にこれら両陣営の地域主義が直接的に対決する場面がなかったのは、政治/安全保障において、米ソの地域主義の目的のすれ違いがNATOとWTOに深刻な安全保障上の対立関係を作り出さなかったのではないだろうか。 本稿では、米ソの主導した地域主義に新たな視覚を提供するために、冷戦の起源を辿り、修正主義の立場から冷戦期の米ソ地域主義の目的の相違を比較検討する。そのために、第一章では冷戦の起源を伝統主義、修正主義、ポスト修正主義に整理する、第二章において安全保障面ではNATOとWTO、経済面においてはWTO/IMFとCOMECONなど米ソ地域主義の比較を試みる。第三章においては、米ソ地域主義がそれぞれ何を目指していたのかを明らかにしたい。