著者
栗田 尚弥
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.185-232, 2015-03

本稿は、幕末の海防論者であり、陽明学者である平戸藩士葉山佐内の思想について分析するとともに、その思想の吉田松陰への影響について論じたものである。著者は、海防論、対外観、陽明学(王陽明および大塩平八郎)に視点を置いて佐内の思想を見るとともに、「西洋兵学への開眼」、「対外観の変化」、「民政の重視」、「陽明学との邂逅」の四点について、佐内の思想が松陰に与えた影響について論じている。これまで、平戸留学が吉田松陰の思想に大きな影響を及ぼしたということはしばしば論じられたきたが、葉山佐内との関係性において論じられたものはほとんどなく、佐内自体の研究も極めて少なかった。本稿は、佐内の思想の持つ合理性、脱中華思想性、平等性を論証するとともに、この思想を受容することによって、松陰が単なる伝統的兵学者から「思想家」へと脱皮したことを明らかにした。
著者
谷口 洋幸
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.116, no.3, pp.523-548, 2009-09
著者
木村 光江
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.239-268, 2015-03

本稿は、イギリス二〇〇七年重大犯罪法第二編(The Seirious Crime Act 2007, Part 2)の共犯規定について検討を加えたものである。同法は、コモン・ローの独立教唆罪を廃止し、未完成犯罪としての教唆・幇助を処罰するものであり、アメリカの九・一一事件やロンドンの地下鉄爆破事件などを受けた、テロ対策としての立法の一環と位置づけられる。しかし、その処罰の広さと曖昧さに対し、学説のみならず議会からも批判が加えられている。法律委員会は、同法に続いて共犯法全体の改正を目指し、既に改正案も提示しているが、二〇〇七年法への批判の影響から、未だに立法に至っていない。本稿では、イギリス共犯法の動向を手がかりとして、世界的に重大な課題となっているテロ対策の必要性と、共犯処罰の妥当性のバランスの重要性を指摘した。
著者
力丸 祥子
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.43-68, 2014-10

二〇一三年五月一七日、フランスは「すべての者のための婚姻に関する法律」を制定し、世界で一四番目に同性婚を認める国となった。 本稿では、同法制定以前に創設されたパックスの制度との対比をしつつ、その違いからフランスで同性婚を認める必要性があるとされたことを明らかにする(一)。同法は世論を二分する中で可決され、これにより同性婚及び同性婚カップルが子を持つ権利が認められることとなった。 しかし、同法はまた新たな問題をも生み出した(二)。具体的には①同性婚の司式の拒否、②同性婚カップルが子を持つことができる権利を有することと関連して、彼らが人工生殖や代理母により子を設けることの可否である。中でも人工生殖に関しては、人工生殖に関する生命倫理法が、人口生殖をなしうるのは、異性間カップルに限っていることから、法のねじれ現象が生じ、問題となっているという状況を紹介する。 最後に結びにかえて、我が国で同性婚を認めることの可否に関する動きにつき、同性婚合法化の動きのあるアジア圏の国々の状況も考慮に入れつつ、簡単に触れる。
著者
富井 幸雄
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.227-267, 2014-10

ハーパー首相は二〇一三年一〇月、連邦控訴裁判所判事M.ナドンをカナダ最高裁(SCC)判事に任命した。SCCは翌年三月、これを無効とするとともに、SCC判事の構成は憲法の改正の手続による以外変更できないとした。本研究は、この判決の意義を検証することで、SCCの立憲的位置づけを明確にし、カナダの連邦主義がそこに色濃く反映されているのを再認識する。SCCは憲法上の機関とはされず、一八六七年憲法一〇一条を受けた議会制定法(最高裁判所法(SCA))によって創設される。SCAが九人のSCC判事のうち三人はケベック州の法曹から任じるとしているところ(六条)、それは現職に限定されていると判示した。また、SCAは一九八二年憲法五二条の定義する憲法に含まれていないけれども、同憲法四一条はSCCの構成は憲法改正手続によれとしており、これが適用されるとした。判事の構成、とくにケベック三人枠は憲法にあたるとしたのであり、そこにSCCの構成の特徴を見出す。カナダ憲法の改正手続は実に複雑であり、このプロセスに州が参画していくことが強く主張された歴史的経緯がある。SCCの構成は、連邦議会のみでいじられるのではなく、州の同意がなければ変えられないとしたのである。
著者
冨川 雅満
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.269-310, 2014-10

本稿は、暴力団員がその身分を偽ってまたは秘匿して、契約約款において暴力団排除条項を設けていた相手方と契約を締結させた事案(暴力団事例)において、最高裁が下した詐欺罪に関する近時の判断について、ドイツとの比較法的観点から検討するものである。ドイツにおいては、類似の事案構造を有するものとして、いわゆる雇用詐欺が問題となっており、そこでは財産的損害、欺罔行為が肯定されるかが議論されている。ここでの議論を参照し、わが国の判例・学説と対比させることで、暴力団事例における最高裁の判断構造を分析することが、本稿の目的である。
著者
榎本 浩章
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.151-204, 2014-06

文久二年(一八六二)の参勤交代制度改革について、これまでは、江戸幕府が諸藩を圧倒する存在ではなくなり、やむをえず緩和したという、消極的評価が主であった。しかし近年は、当時の幕政改革についても多角的な視点から研究が進んでいる。本稿ではそれらを参考に、軍事改革のための冗費節減策として、また当時重視されていた「公議輿論」の理念に沿った幕政改革の政治構想をうかがわせる実践例として、松平慶永・横井小楠など改革に携わった当事者の言動を検討した。 そして、参勤交代の緩和後が実際にどのような状況だったのかについては、これまで具体的な研究がされてこなかった。そこで、幕令や藩史などの史料を元に、諸藩の対応を検証したところ、緩和された参勤交代は確かに実践されていたが、当時の朝廷と幕府の対立、また対外的緊張や国内の治安悪化などといった要因から、諸大名は各地の警衛に動員されて国元に戻る事ができない場合が多く、改革の理想通りには運ばなかった。さらに元治元年(一八六四)、参勤交代を再び旧に復する幕令が出されたが、これについても従わなかった藩と従った藩とがあったことを明らかにした。
著者
藤井 篤
出版者
中央大学
雑誌
法學新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.715-728, 2015-03

平成一一年に始まった司法制度改革は、裁判員裁判制度の創設をはじめ司法制度の全般にかかわる大改革となった。弁護士制度の改革の内容は多岐にわたるが、弁護士懲戒制度はその根幹を維持しつつも、大きな変容をとげた。懲戒手続の第一段階となる綱紀委員会の手続に綱紀審査会を設け法曹でない学識経験者が審査する制度としたこと、従来弁護士のみが委員となっていた綱紀委員会に裁判官、検察官、学識経験者からなる外部委員を加えたこと、懲戒手続開始の時期を綱紀委員化の手続にふしたときとし明確にしたこと、懲戒請求権者の異議申出の制度が明確になったことなどがある。制度改正により弁護士に対する懲戒の制度は透明性を増したとされているが、その後、弁護士の不祥事は減少せず、増加している。特に依頼者から預かった金銭の横領に関する事件は、高齢化した弁護士、経営状態が悪化した弁護士などにより度々に引き起こされている。 弁護士の懲戒制度の位置づけをとらえ直しその制度を実効性のあるものとし、国民の信頼に応えられる弁護士をどのように形成して行くのかを模索する論考である。
著者
武智 秀之
出版者
中央大学法学会 ; 1891-
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.123, no.8, pp.183-225, 2017-01
著者
斎藤 信治
出版者
中央大学法学会 ; 1891-
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.457-525, 2015-08

会社専務一家四人が惨殺・放火された袴田事件では、「残忍非道」・「鬼畜の所為」、反省もない等として、死刑が確定したが、冤罪との声も多かったところ(例、先駆的な高杉晋吾氏、緻密な本を書いた山本徹美氏、有益な本を編著の矢澤曻治氏)、弁護団・諸支援団体の粘り強い活動と大変な尽力もあり、平成二六年三月二七日に静岡地裁が再審開始(また、死刑及び拘置の執行停止)を決定し、袴田巌氏は四八年振りに釈放され、同氏を気丈に守り抜いてきた姉秀子氏の世話の下、快方に向かっている。このことは、問題が多く且つ深刻過ぎた静岡県警をかつて殆ど盲信したマスコミによって、明るいニュースのように報じられている。しかし、依然、今度は東京高裁を舞台に、再審開始の当否が、厳しく争われている。 本稿は、今日から見ると、袴田氏を有罪とした司法判断には極めて問題が多く、もはや維持できないことを、先行諸業績等に負いつつ、独断も交え、多岐にわたり詳説している。なお、疑問点も目立つ中、多くの令名ある法曹も関与しながら、なぜ死刑冤罪が三審一致で生まれ、久しく維持されたのかを考え、一つには、検察の在り方が根本から問われていることを指摘する。
著者
伊比 智
出版者
中央大学法学会 ; 1891-
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.122, no.3, pp.241-256, 2015-08

強制わいせつの被害に対する、告訴当時一〇歳一一か月の被害者の告訴能力を肯定した事例
著者
山内 惟介
出版者
中央大学法学会 ; 1891-
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.855-910, 2015-08

伝統的な理解によれば、国際私法は、国家私法間の牴触を解決する法体系であると考えられている。行為規範という視点からみると、法の内容が明確である限り、法の適用結果について予見可能であるところから紛争の予防が十分可能であると説明されてきた。しかしながら、立法の内容が明確であるというにしても、その解釈の仕方に幅があり得るため、法の適用結果について予見不能な事態が頻出している。一国内でさえこのような不安定な状況がみられることに加え、渉外事件では解決機関としての裁判所も適用可能な国家私法も複数登場するためにこの種の不安定性がいやが上にも倍増する。しかも、ある国では解決済みとされる紛争が別の国では未解決のまま残されることも稀ではない。さらに、世界共通の全地球的課題となると、どの国でも未解決のまま放置され続けている。このような状況に対して、国際私法は、いかなる現実的解決策を提供できるか。国際私法のパラダイムを根本的に転換する必要性を指摘するとともに、ひとつの可能性を提案したのがこの小稿である。