著者
藤本 幸永 福島 久典
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.48-55, 2011-09-25 (Released:2017-06-08)
参考文献数
34

高野槙68%エタノール抽出液の抗菌物質を部分精製するために,ヘキサン,ジイソプロピルエーテル,酢酸エチル,ブタノールで分画した.各層を乾固し,60%エタノールで溶解して抗菌活性を測定した.抗菌活性は,Staphylococcus aureus ATCC 12600を指示菌としてsoft agarとともに流し固めた平板上に,それぞれの試料の2培連続希釈液10μLずつを滴下して培養し,発育阻止が認められた最大希釈の逆数で表した.各活性画分はそれぞれSephadex^<TM>LH-20によるゲル濾過で分画した.またゲル濾過で得られた活性画分は高速液体クロマトグラフ分析に供した.さらに各抗菌活性画分の抗菌域についても検索した.最も強い抗菌活性が認められたのはジイソプロピルエーテル層(74.1%)で,ついでヘキサン層(19.7%),酢酸エチル層(6.2%)の順であった.ブタノール層と水層に活性はみられなかった.ヘキサン層をゲル濾過に供した結果,2つのピークが得られ,活性は第1ピークと第2ピークの間(Hb)にみられた.ジイソプロピルエーテル層のゲル濾過では3つのピークが得られ,抗菌活性は第1ピーク(Ea),第2ピーク(Eb)および低分子画分(Ec)に認められた.またHb,EbおよびEc画分について高速液体クロマトグラフで分析した結果,Hb,Eb画分では混在物のため抗菌活性のあるピークを分離することはできなかったが,Ec画分では4つのピークが得られ,活性は3番目のピークにみられた.したがって今後,このピークの成分について明らかにする予定である.Hb,Ea,EbおよびEc画分の通性嫌気性菌,好気性菌,真菌に対する抗菌域は,名画分間で相違がみられた.また嫌気性菌に対しても同様であった.これらの結果を総合してみると,高野槙68%エタノール抽出液は,極性,分子量,抗菌域の異なる抗菌物質を複数含んでいると考えられる.